『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.02
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いうものだ」
何かを納得したかのように、男が俺に向けてそう言った。
『死んで、くれないかな?』
ぞくりと背筋を駆ける悪寒に、彼女の言葉が喚起される。
それに触発されて呼び起こされた夢での出来事は、まさしく今の状況と酷似していた。
―――つまり。
―――この後、俺は。
「……ふむ。 主も、仲間も来る様子はない。 消える素振りも、魔方陣の展開すらも。
状況から察するにやはりおまえは、はぐれのようだな。 ならば、問題はないだろう」
男が右手を伸ばす。 なんでもないような仕草で、右手を前に。 俺に向けて。
ヂヂ、ヂヂヂヂヂ。 どこかで聞いたあの音が、静かな夜に鳴り響く。
判っている。 この後なにが起こるのか、俺は既に知っている。
光が。 集まる光が形を成し、顕現する。
夢の再現、光の槍だ。 夕麻ちゃんのそれと同じく、男も槍を手にしている。
―――ああ、判った。
―――判って、しまった。
唐突に理解してしまった“におい”の正体。 五感ではない何かが捉えた未知の感覚。
死の恐怖。 漫画やアニメのように言うなら、殺気とでも呼ぶべきか。
俺が“におい”と錯覚していたその感覚は、迫り来る死への警鐘だったのだ。
―――殺される。
そうと理解した瞬間に、既にそれは終わっていた。
ずぶり、と。
悲鳴を上げる暇さえもないままに、痛烈な感覚が下腹部を貫いた。
「……あ。 え?」
一瞬の出来事に、なにが起きたか理解が遅れる。 ……そして、気付いた。
生えている、光の槍が。 いいや、違う。 違うだろう。
貫かれた。 この槍に、この光に、俺の身体は穿たれた。
「―――っ!!」
自身の身に起きた事態を正確に把握した途端、激痛が神経を引き裂いた。
痛い。 なんだ、これは。 この痛みは。
腹の中。 痙攣する胃が、肺が、腸が腹に溜まった何ものかを喉へ、喉へと押し上げる。
ごぼっ。 不快な音、まるで詰まった排水溝が逆流するような不愉快な響き。
そんな音を伴って、俺の口からそれは溢れた。
血だ。 それも、大量の。
俺の血が、俺の生命が、酷く不快な音を伴い、口から外へと零れていく。
堪らず俺は膝をつく、あまりの痛みに耐えかねて。
「あ、が……。 ぎ、ギ、が、ガアァああああッ!!」
腹を焼く槍が、光が、激流となり俺の身体を侵食する。
咄嗟に動いた俺の両手が、槍を捕らえる。 握り締める。
けれど、行為は無駄に終わる。
刹那に感じた灼熱に、俺は堪らず両手を離してしまった。
見ると火傷が生じている。 これでは、抜けない。 掴めない。
「痛いか? 痛いだろう。 光はお前達にとって、致命の猛毒
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ