暁 〜小説投稿サイト〜
ハイスクールD×D 〜我は蟲触の担い手なれば〜
『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.02
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追って来ることは不可能だろう。
 ひたすらに走り続けて十数分ほど、気付けば俺は開けた場所へと駆け込んでいた。
 公園。 そこは中央に噴水の設置されている、この辺りでは一番大きな公園だった。
 俺は一旦走るのを止め、その場でふぅと一息ついた。
 振り返ると背後にあるのは夜闇と静寂、男の影はそこにはなかった。
 安堵した俺は息を整え、ゆっくりと噴水のほうへと歩き出す。

 ―――ここは、確か……。

 ぐるりと周囲を囲う街灯、その中央の噴水の傍らにて。
 俺は奇妙な感覚に……いいや、強烈な既視感に捉われる。
 ……知っている、この光景を。 俺は確かに知っている。
 ……夢。 そうだ、夢で見た光景と同じだ、この光景は。

 ―――違う。
 ―――違うだろう、イッセー。
 ―――あれは夢だと、お前は本気でそう思っているのか?

 ぞくり、と。 強烈な悪寒が背筋を撫でた。
 何かが、いる。
 恐ろしい何者かが、俺の背後に。
 ゆっくりと、慌てずに。 俺は確かめるように背後へと振り返る。

「逃げられるとでも思っていたのか? 困ったものだな、下級な存在はこれだから」

 振り返った俺の眼前を黒い羽が舞い散った。 
 カラス? いいや、もっと大きい。 鳥にしては大きすぎる。

 ―――嘘、だろう。
 ―――まさか。 まさか、そんな。

 ありえない光景に、俺は自身のその目を疑った。
 男が立っている。 背中に翼を生やした例の異常者が。
 ……何で、コイツがここにいるんだ?
 追ってきたのか? あんなに稼いだはずの距離を、この短時間で?
 まさかとは思うが、あの翼で飛んできたとでもいうのだろうか?
 ありえない。 ありえないだろう、そんなことは。
 戸惑い、困惑を極める俺のようすに、男が舌を打ち鳴らす。

「まったく、下級が手間を取らせおって。 ……まあ、いい。
 こんなところでお前たちに邪魔をされたくはないのでな。
 さあ、さっさとお前の属する主の名を言ってみろ。 そうすれば、こちらとしても相応の―――」

 ぷつり、と。 そこで男の言葉が途切れた。
 同時に走った嫌な予感が、俺の身体を支配する。
 酷く、“におう”。 いいや、嗅覚は捉えていない。 何も。 何も。
 けれど、間違いなく。 先程よりも濃厚なその“におい”は、男を中心に俺のほうへと漂ってくる。
 一歩、また一歩。 音を殺して後ろ向きに、俺は少しずつ足を進める。

「……まさかとは思うが、お前、“はぐれ”か?」

 ぎらり、と。 狂気を瞳に宿した男が、俺の姿を嘲笑う。
 喜悦に、愉悦に歪んだその表情は、まさしく獲物を捕捉した獰猛たる笑みだった。

「そうか、成程な。 主なしなら、その困惑する様子も頷けると
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