『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.02
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初めてのことだったよ、畜生め」
―――は、は。 は、は、は、は、は。
乾いた嗤いが暗い室内に反響する。 やめろ、元浜。 やめてくれ。
液晶に映った熱く激しい情事の光景とは裏腹に、俺達三人の気持ちはどこまでも沈んでいった。
「俺たちって、いったい何なんだろうなぁ……」
再生が終わり、暗転した画面を前に松田が言葉を漏らす。
決まっている。 松田だって、承知の上での発言だろう。
エロDVDでどこまでも鬱になれる俺達は、まさしくモテない男子だった。
……いったい、どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
松田の用意したDVD、最後の一本がようやく終わった。
立ち上がり、カーテンの隙間から覗く空を見る。
既に10時過ぎということもあり、予想通りの夜闇が覗けた。
親には松田の家で過ごすと伝えてあるが、これ以上遅くなってはさすがに心配するだろう。
「さて、それじゃあ今夜はこれでお開きにするか」
俺の言葉を受け取って残る二人も立ち上がり、その場でぐっと背を伸ばした。
明日は平日。 よほどのことがない限り、当然学校へは行かなければならない。
今日はこのまま帰宅して、手早く明日の準備をするとしようか。
―・―・―・―
「じゃあな」
玄関で俺たちを見送る松田に別れを告げて、俺と元浜は夜の路地を歩き出す。
点々と設置された街灯、それらが照らす夜の道に二人の足音だけが響いた。
「なあ、イッセ−」
「なんだよ、元浜」
「いい夜だと思わないか? こんな日には、そりゃエロDVDも見たくなるってもんさ」
「……おいおい。 まさか次には『月が綺麗ですね』なんて言い出すんじゃないだろうな」
「やめろよ、気色悪い。 生憎と俺には男の固いケツに欲情するような性癖はないんだよ」
「知っているさ、親友だからな。 ……じゃあ、また明日な」
「ああ、いい夢見ろよな」
家へと帰る道の途中、俺は調子のおかしい元浜に別れを告げて見送った。
本当に、どうしてこんなことになったんだろうか。
思わず口から漏れたため息は、仕方のないことなのだろう。
元々は俺を元気付けるための鑑賞会だったというのに、気付けば三人そろって落ち込んでいた。
まあ、明日にはいつも通りのあいつらに戻っていることだろう。
その点では心配は要らないはずだ。 ……たぶん、きっと。
……しかし、元浜のカミングアウトは本当に衝撃的だった。
まさか、カツアゲとは。 しかも偽の手紙で誘い出すなんて。
手紙を見つけたとき、あいつはいったいどんな気持ちだっただろうか?
想像は、容易く出来る。
きっと夕麻ちゃんに告白されたときの俺と同じ反応をしたのだろう。
うろたえ、戸惑い、そして歓喜したに違いある
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