第十二話
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「……はい」
(だが、その前にひとつ肝に命じておけ)
男は急に声のトーンを下げると、話を続けた。
(復讐の先には何も生まれん。復讐は復讐を生むとも言うが、今回はそれは気にしなくてもいいだろう)
「……」
(最後に……復讐で戦うことは自身によって強みになるが……弱みにもなる。平常心を忘れるな。でないと)
「死ぬ……ってことですよね?」
男の声が言う前に俊司が答えを言った。
男の声は驚いていたのか感心していたのか、あるいは呆れていたのかは知らないが、数秒間何もしゃべろうとはしなかった。
「……違いましたか?」
(……わかっているならそれでいい。無理はするな)
「ご忠告ありがとうございます」
俊司はそう言って、見えない相手に一礼を返した。
(あと、まさか自分も死のうとは思っていないな?)
「……どうでしょうかね?」
男の声の問いかけに俊司は笑いながら答えた。
男の声は一度ため息をついていた。たぶん呆れていたのだろう。俊司にはそう思えていた。
(わかっているとは思うが……お前が死んだところでなにもかわらんぞ?)
「わかってますよ。それくらいは」
(それに……気づいているのだろう? あの子のこと)
「……」
あの子のこととは妖夢のことだろうと、俊司は考えていた。
妖夢に特訓を頼み始めてから、彼女の様子が少しおかしいことには気づいていた。それが何を意味するのか、俊司はわかりたくなかったがわかっていた。
それに戸惑っている自分もいた。素直に言えばうれしいことなのだが、自分自身がどう思っているかがわからずにいた。それに、それ以上に困惑することもあった。
妖夢は由莉香と似ている部分が多い。それが俊司をさらに戸惑わせていた。
由莉香は死んだ。だが、妖夢を見ていると由莉香の面影を合わせてしまう自分がいる。俊司はそんな自分が許せずにいた。それが一番の原因となっていた。
自分が復讐のために動き死んでしまえば、彼女が悲しむこともわかっている。だから素直に動くことができなかった。
(悩んでいるな?)
「……」
(難しいことだ。時間をかけてゆっくり考えるがいい。ここから先は……少年の仕事だ)
「あれだけ言って、最終的には人任せですか」
(決断するのは私ではない)
「……そうですね」
俊司の顔から笑みがこぼれることはなかった。
(さて……そろそろだな)
「?」
(時間だということだ。では……また会おう……里中俊司)
「……」
何かに切り離される
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