第二十話 挑発もそこそこにしなきゃな
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「悪い悪い。別に侮辱したつもりなんかねえんだ。ただ、未だに名乗ってくれないから、貴族ってこんなもんなのかなと思ってさ」
「ぐ……」
顔が紅潮(こうちょう)していく。
本人ですら名乗るのを忘れていたみたいだ。
「それとも、平民には名乗る名前など無いってか? 貴族は偉いんだな。姫であるクィルは名乗ってくれたのに」
意地が悪そうに言葉を放つ。
すると、男は増々顔を赤らめていく。
「……いいだろう。確かにいくら蛮族(ばんぞく)だからと言えど、名乗りもしないのは貴族の誇りに反する」
ほ〜ら、思った通りの反応。
「よく聞け。そして脳に刻み付けろ! 僕はリューイ・フォン・シュールベル。聞いたことがあるだろ?」
「ねえよ」
「はあ?」
「初耳だな」
「な、な、なななな」
驚愕に顔を歪ませているが、やはりイケメン、不細工になっては……いや、少し醜いかな?
すると、リューイの後ろにいた取り巻きの一人が口を開ける。
「嘘を吐くな! この国に住んでいる以上、シュールベル様の名を知らないわけがない!」
そんなこと言っても、知らないもんは知らない。
すると、それを察してか、闘悟の腕を取り怯えていたクィルが耳打ちをしてくる。
「あ、あの、シュールベルというのは、王侯(おうこう)貴族の一つなのです。彼の父であるシュールベル卿(きょう)は、グレイハーツの三賢人(さんけんじん)とも呼ばれるほどの方なのです」
「なるほど」
つうことは、リューイは貴族の中でもかなり高位に位置する貴族だということか。
「そっか、有名なんだな」
闘悟の言葉にようやく表情を少し緩ませる。
「ふん、どうやら僕の凄さが……」
「でも、それってお前が偉いんじゃなくて、父親が凄いんだろ?」
闘悟の言葉に場が凍る。
クィルでさえも、固まっている。
ん? 何か変なこと言ったのか?
いや、言ってないな。だからまだ続けるぜ。
「おいクィル、笑えるぞ。アイツ、父親の地位を自分の力だって勘違いしてるぞ?」
笑いを含めながら言う。
すると、周囲の者達の顔が青ざめていく。
ただ一人、リューイだけは噴火寸前のような表情だ。
「き、き、き、貴様ぁっ!!! 言わせておけばっ!」
すると、リューイの体から電気が迸(ほとばし)る。
取り巻きの連中も急いで彼から離れる。
「こ、後悔させてやる! このリューイを侮辱したこと、万死に値する!」
さらに放電が激しくなる。
皆が焦燥感と恐怖感に苛(さいな)まれる中、闘悟だけは平然としていた。
へぇ、雷属性の魔法士かな?
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