第5章 契約
第61話 騎士叙勲
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グドリアン湖の精霊。彼女の前で為される誓いは、この世界では誓約。
少し、哀しげな瞳に俺を映した湖の乙女が、しかし、それでもそっと首肯く。
そして、同じように、少し哀の色合いを浮かべたイザベラが、
「これで、略式とは言え、あんたはガリアの騎士として任じられたと言う事だよ。但し、所属は北花壇騎士団。故に、そう、声高に吹聴して回る事は出来ないけどね」
そう、告げて来る。もっとも、俺自身、ガリアの勲功爵の身分など欲しては居ませんから、それで充分。
まして、今回の任務に就く際に必要だから拝命しただけで、返せと言うのなら、直ぐに返上しても問題ないのですから。
それに、タバサがオルレアン家を正式に継ぐ時に、俺にも彼女の傍に居るのに相応しい騎士階級が彼女の手に因って便宜上与えられると思いますからね。
彼女に取って、俺は一蓮托生唇歯輔車の関係。余程の事が無い限り、彼女の方から俺に去れと言う事は有りませんし、俺の方から彼女を見限る可能性は非常に低い。
そして、霊的な意味での俺達二人の関係は、死がふたりを分かつまで続く関係ですから。
「そうしたら、今回の任務について細かく説明をするから、聞いて置きなよ」
☆★☆★☆
ガリア西部ブルターニュ半島の西端に存在する港湾都市ブレスト。
夕刻が近付くこの時間帯故か、それとも季節柄か。もしくは、この地域の特性か、空には薄く雲が掛かり、周囲には薄い霧が掛かった状態。
およそ、人探しに適した雰囲気では有りませんが……。
もっとも、霧に沈む港町と言うのは、ある意味、物語の舞台としては相応しい場所では有りますか。
海から上がり来る乳白色の帳。生臭い魚と、潮の臭い。俗に言う磯臭い臭気に包まれた、と言う表現のしっくり来る街。
そして、独特の風貌を持つ、街の住人たち……。
但し、ここブレストの住人の多くは、ごく一般的な、彫りの深い金髪碧眼のガリアの住人で、伝承に伝えられる、丸く大きな目に張り出したエラ。極端に小さな耳。肌は継ぎ接ぎされたかのような斑模様をした鮫肌。……などと言う、最早、異界の住人そのものの姿形をしている訳ではないのですが。
もっとも、それは当然の事なのですけどね。
何故ならば、ここはガリア両用艦隊の停泊する港。ここは、ガリア中から集められた軍人が中心となって発展して来た軍用港ですから、そのような、一地方にのみ現れる特殊な風貌の住民ばかりと成る訳は有りませんから。
そんな、薄い霧では有りますが、それでも少し先の見通しの悪くなったこの地……。ガリアの大空と大海の平和を護る艦隊の根拠地に立つ大小ふたつの影。
「どうでも良いけど、この世界
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