第5章 契約
第61話 騎士叙勲
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ベラは、
「急場だから、略式で行くよ」
……と言った。
そして、厳かな、とは言いかねる雰囲気ながら、俺のガリアの騎士への叙任式が始まったのでした。
俺から受け取った宝刀を両手で額よりも高い位置に、まるで何者かに捧げるかのような形で持ち上げ、
「この者が、寡婦、孤児、そしてあらゆる弱者の保護者かつ守護者と成りますように」
そう言う祈りの言葉にも似た台詞を口にするイザベラ。その声は凛としていて、普段の、少々いい加減な雰囲気の彼女とは一線を画す物。
もっとも、これでは誰に祈ったのか判りませんが……。
ただ、彼女は知って居たのでしょう。俺が、ブリミルなどと呼ばれて居る神の事など、髪の毛の先程も信仰もしていない事を。
そして、
「まさに、騎士になろうとする者よ。真理を守り、孤児と寡婦。そして、あらゆる弱き者と働く人々すべてを守護者と成るように」
黒拵えの鞘から宝刀を抜き放ち、俺の肩をその宝刀の刀身でそっと叩くイザベラ。その姿は、正に騎士に祝福を与える貴婦人の装い。
そして、鞘に収めた宝刀を再び、両手で自らの額よりも高い位置に恭しく掲げた後、俺に手渡して来る。
その宝刀を、こちらも自らの額より高い位置で受け取った俺は、ゆっくりとその場で立ち上がり、そして、鞘から抜き放った。
俺の霊気と、室内に灯る魔法の光りを受けて、蒼銀に光り輝く宝刀。
そして、自らの右側を一閃!
空を断つ斬撃が、イザベラの長い蒼の髪を揺らす。
そして、一度鞘に戻された宝刀を引き抜き、更に一閃。
今度は左を斬り裂いた斬撃が、軽い真空状態を起こす。
そして、もう一度鞘に戻されていた宝刀を抜き放ち最後の一閃。
輝ける勝利を呼びし宝刀が空を斬る度に、俺と、そして、イザベラの周囲を精霊が舞い、俺の霊気を受けた宝刀が一太刀ごとに蒼き輝きを増して行く。
最後に鞘に収めた七星の宝刀が、その輝きを鞘へと鎮め俺の左手内に完全に静まった後、イザベラの執務室内に最初に存在していた静寂が支配する。
そう。この静寂を破るのは、他の誰でもない俺の役目。本来ならば、叙任者と神に対しての誓いを口にする場面。
しかし、
「誰に誓う訳でもない。私は私に誓う。
私は私の主の為にのみ、剣と成り、盾と成る事を誓う」
俺は、この世界のブリミル神など信仰してはいません。まして、湖の乙女や崇拝される者の父と言われる、大いなる意思と呼ばれる存在なども信用してはいません。
俺が誓いを立てられるのは、この場にはいない少女に対してと、自らのみ。
ならば、自らに対して誓うしか方法はないでしょう。
誓約の見届け人は、誓約の精霊と、この世界で呼ばれて居るラ
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