第5章 契約
第61話 騎士叙勲
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湖の如き瞳を、自らの手元に開かれた革製の分厚い書籍から、俺の二色の瞳に移した後に、
「水の秘薬は万能の薬。適切な量の投薬を行えば、命運が尽きていない相手の病や怪我、欠損した部分さえも癒す事が出来る」
そう続ける湖の乙女。そしてこの答えは、俺が彼女に問いたかった内容の答えでも有りました。
それに、彼女の答え通りの能力を水の秘薬が持っているのならば、何の問題もないでしょう。
まして、命運が尽きていた場合は、むしろそれ以上、生き続けさせる事の方が天命に逆らう行為となり、其処に悪い気の巡りを作り上げ、結果として周りに不幸を呼び込む事と成るだけですから。
もっとも、何らかの禁呪を使用したら、それでも蘇らせる事は可能だとは思いますが。
「つまり、水の秘薬の適切な投薬を行っても尚、死亡した場合は、それは天命だったと思えば良い訳やな?」
俺の問い掛けに、微かに首肯く事に因って答えと為す湖の乙女。
彼女の言葉を聞き、その仕草を確認した後に、俺はタバサの整った容貌を見つめる。
そして、
「水の精霊と水の秘薬。それに、タバサ自らが母親の看病に向かう。これでも不安なら、俺も仕事を放り出してでもタバサに付いて行くけど、どうする?」
……と、問い掛けた。
確かに、封建君主制度では、君主からの命令は絶対。しかし、俺に取っては、ガリアよりもタバサの方が大切です。
まして、真の意味で俺を縛るモノは、この世界の何処にも存在していませんから。
戒律も。契約も。誓約も。そして、本来は彼女と交わした約束さえも。現在、本当の意味で俺を縛っているのは自らの矜持。自らの矜持だけが俺を縛っているので有って、それ以外の者や物、そして、モノで有ったとしても、俺を縛る事は出来ません。
しかし、と言うか、矢張り、タバサはゆっくりと三度首を横に振った。
そして、
「大丈夫。母の様子を見るのなら、わたしだけで充分」
先ほど、ほんの少しだけ垣間見せて居た不安に似た色を感じさせる事もなく、俺に対してそう告げて来るタバサ。
そして、その言葉から感じられる部分も陽。少なくとも、タバサが話した内容に関して、彼女は本心からそう思って居ると言う事は感じられる。
それならば、
「ウィンディーネ。タバサと一緒に行って、彼女の母親の治療を頼めるか」
それまで、現界させられてから、ずっと、俺と紫、そして蒼の少女のやり取りを黙って見つめて居た水の精霊に対して、そう依頼を行う俺。
そんな俺の依頼に対して、無言で。しかし、強く首肯いて答えてくれるウィンディーネ。これで、水の秘薬に、俺の連れて居る式神の中では一番の治癒魔法の使い手ウィンディ
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