第三十二話 その始まり
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殆どが寝返った」
「それで終わりですか」
俺の言葉に閣下が首を横に振った。違うのか……。
「寝返らせた連中にbQを唆せた。“貴方こそが頭領になるべきだ、自分達はそれを望んでいる”、そう言わせた」
「それは……」
「時期尚早と言って反対した人間も居た、bQの本当の味方だな。だがそれらの人間は臆病者として排除された、そういう風にしむけた……。bQがクーデターを起こした時、彼の周りに味方は居なかった。味方だと思った部下達は皆、彼に銃を突きつけた……」
しんと冷えた様な沈黙が落ちた。周囲には人も居る、ざわめきも聞こえるがここだけは別世界のようだ。
「……彼は未だ十七歳でしょう?」
声が掠れた、閣下は無言だ、答えようとしない。十七でそこまでやるのか……。非情、冷酷、敵も味方も震えあがっただろう。
「取り押さえられたbQに黒姫の頭領が自分が全てを仕組んだと言ったらしい。そして一発だけ撃てるブラスターを渡した……、人として死ぬか野良犬のように始末されるか、好きな方を選べと……」
「……自殺したのですね」
閣下が頷いた。また思った、冷酷、非情……。
「何故そんな事をしたのか、先代の頭領に問われて黒姫の頭領はこう答えたそうだ。“試したかった”、とね」
「試したかった、ですか……、一体何を……、それにしても危うい事をする」
何を試したのだろう、運か、それとも海賊としての覚悟か……。眩暈がしそうだった、振り払うかのように頭を振った。
「平然としていたそうだな、bQが自殺を選択した時も顔色一つ変えずに見ていたらしい。……黒姫一家にヴィルヘルム・カーンという老人が居る。彼が言っていたよ、“あの時、次の頭領は決まったと思った。自分だけじゃない、皆がそう思ったはずだ”、とな」
「……」
「クーデター事件の一ヶ月後、頭領が急死した。遺言は黒姫の頭領を後継者にと言うものだった。誰も反対しなかったそうだ。海賊になって一年足らず、十七歳の頭領が誕生した、前代未聞だな。しかし今では黒姫一家は帝国でも屈指の海賊組織になっている」
「……」
試したのは頭領としての器量かもしれない。黒姫の頭領はそうは思わなかったかもしれないが皆はそう思っただろう。
「カーンが言っていたよ、“死にたくない、死ねない”と。黒姫の頭領が何処まで行くのか、何処に行くのか、見届けたいそうだ」
「……閣下は如何お考えです」
俺の問いかけに閣下は少し考え込んだ。
「そうだな、私も見てみたいと思っている。今ならカーンの気持ちが良く分かる、……私も海賊になったかな」
「それは困りましたな」
閣下が苦笑を浮かべている、多分俺も同じだろう。
「次の戦いでは参謀長として補佐する事になりますが……」
「勝ち戦なら前に出ないそうだ、負けそうになったら出ると言
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