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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十二話 その始まり
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「皆の話では最初は極めて冷徹で強か、そう見ていたようです。しかし最近では何とも言えない怖さ、不気味さを感じると……。何処か我々とは違う、そう見ています」
閣下が頷いた。

「普段は何処にでもいる穏やかな若者だ。書類仕事をしているところは黒姫と異名を付けられる海賊には見えん」
「……」
「しかし卿らが感じた様に時折ヒヤリとするものを感じる時が有る。まるで鋭利な刃物を突き付けられた様な感触、と言えば良いのか……」
閣下はもう笑みを浮かべてはいない。

「部下達は黒姫の頭領を怖いとは思わないのですか」
「もちろん怖いと思っている。しかし海賊の頭領はそのくらいでないと務まらない、そう思ってもいるようだな」
「……」
俺が無言でいると閣下が軽く笑い声を上げた。

「海賊の世界と言うのは実力の世界だ。彼らは強く賢明な頭領を望んでいる。弱い頭領、愚かな頭領ではあっという間に組織は衰退するからだ。そして強く賢明な頭領を得た組織はその勢力を増大させていく」
「なるほど、黒姫の頭領ですな」
閣下が頷いた。

「その通り、黒姫の頭領は僅か数年で弱小組織を帝国屈指の組織にまで成長させた。どの組織も黒姫一家と正面から敵対しようとはしない。それを許さないだけの財力、戦闘力を保持している。黒姫の頭領こそ頭領の中の頭領だろう。部下達は皆心服しているよ」
海賊だけでは無い、我々だって彼を敵に回す事が危険だと言う事は理解している。地球教やフェザーンがどうなったか、それを見れば考えるまでもなく分かる事だ。

「十七歳で頭領になったと聞きましたが反対する人間は居なかったのですか?」
「居なかったと聞いている」
「……」
「聞きたいかね、彼が頭領になったいきさつを」
閣下が悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「御存じなのですか?」
「元々黒姫一家は根拠地を持たない弱小組織だった。辺境に根拠地を持とうと提案したのが黒姫の頭領だった。当時は未だ頭領では無かったがね」
「……」
「先代の頭領はそれを受け入れ組織は辺境を根拠地とした、そして少しずつ安定するようになった。だがそれに反発する人間も居た。何と言っても辺境は貧しかった、将来への展望を見いだせない人間も居たのだろうな」
閣下がグラスを口に運ぶ、俺も一口ウィスキーを飲んだ。

「確か組織のbQがクーデターを起こそうとした、そう聞いていますが」
「その通りだ。それを防いだのが黒姫の頭領だった」
「……」
「bQがクーデターを起こそうとしている、頭を痛めた先代頭領に暴発させて一気に片を付けようと提案したそうだ」
閣下がまた一口ウィスキーを飲んだ。

「bQは強い男ではあったが粗暴な男だった。黒姫の頭領は彼の部下達に彼が頭領になれば消耗品扱いされる、長生きは出来ないと説得したようだ。結局、
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