第三十二話 その始まり
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ー所長の言葉に親っさんが困ったような表情を見せた。副頭領と所長の顔を交互に見る、二人とも厳しい表情だ。親っさんが一つ溜息を吐いた。
「エーリッヒ!」
突然親っさんを呼ぶ声が聞こえた、親っさんをファーストネームで呼ぶ奴は俺の知る限り三人しかいない。ナイトハルト・ミュラー大将、アントン・フェルナー国家安全保障庁長官、ギュンター・キスリング国家安全保障庁副長官だが一体誰だ?
「ギュンター、ギュンター・キスリング!」
親っさんが近づいて来る男に嬉しそうに声をかけた。ギュンター・キスリング国家安全保障庁副長官か……、一度話したことがあるが悪い印象は無かった。副長官も表情に笑みを浮かべている。親っさんの表情が明るい、内心助かったと思っているのかもしれない。
「不用心だな、エーリッヒ。そんな小人数で来る奴があるか」
「やれやれ、今それで二人に怒られていたところだ。卿までそれを言うのか」
親っさんが肩を竦めると副長官が声を荒げた。
「当たり前だ! その二人のいう事は正しい。地球教、フェザーンが卿を殺そうとしているという情報が有るんだ。連中の恐ろしさは卿が一番よく分かっているだろう」
副長官が厳しい表情をしている。どうやらさっきまでの笑みは怒りを押し殺していた笑みらしい。親っさんがアンシュッツ副頭領とリスナー所長に視線を向けると二人が副長官の言葉を肯定するかのように頷く。親っさんは溜息を吐いてからキスリング副長官に視線を向けた。
「分かった、次からは気を付ける。それで、何の用だ? 護衛だけのためにここに出張ってきたわけじゃないだろう。貴金属は既に引き渡したよ」
「迎えに来たんだ、ローエングラム公が卿に会いたいと言っている」
親っさんが目を見開いた。
「おやおや、三枚目の感謝状でもくれるのかな。まあ今回は良い仕事をしたからそのくらいは有ってもおかしくは無いか……」
副長官が顔を顰め、皆は苦笑を洩らした。そんな事は天地が引っ繰り返ってもまずあり得ない。
「フェザーンの状況を確認したいそうだ」
「ロイエンタール、ミッターマイヤー提督から最新の状況報告は届いているだろう。私の情報などカビが生えているよ、意味が有るとは思えないね。……感謝状をくれるなら行っても良いけど」
親っさんがニコニコ笑みを浮かべると副長官が溜息を吐いた。
「ローエングラム公は卿から直接聞きたいと言っているんだ。感謝状は自分で交渉するんだな」
「気前が良くないのがローエングラム公の欠点だ。なんなら国家安全保障庁からの感謝状でも良いよ、私達は随分と卿らに協力したと思うんだけど」
副長官がじっと親っさんを見詰めた。親っさんは相変わらず罪の無い笑顔でニコニコしている。
「諦めろ。さあ、行くぞ」
「……上がケチだと下までケチになるな、親友なのに紙切
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