第三十二話 その始まり
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なものだ……。
リスナー所長が俺達に視線を向けた。緊張しているのが分かる、少しほぐした方が良いだろう。
「そう言えばウルマンが一兆帝国マルク相当の貴金属なんて見るんじゃなかったって言ってました」
「ほう、なぜかな。見たくても見られるもんじゃない、良い思い出になると思うんだが……」
不思議そうな表情だ。
「夢に出るそうです、悪夢だって言ってましたよ」
リスナー所長が微かに笑った。良かった、少しはリラックスできたかな。
「アルント、気を遣わせて済まんな」
「所長……」
所長が俺を見ている、ばれてたか……。
「アルント、俺は大丈夫だ。それより集中しろ、あの連中を当てにするんじゃない。親っさんの警護は俺達の仕事だ」
「はい」
所長の言う通りだ、詰らない事を考えるな。親っさんの身は俺達が護るんだ、あの連中の前で無様な姿は見せられない。
十五分ほど経った時だった。誰かが
「親っさんです!」
と声を上げた。間違いない、親っさんは隠れてて見えないがアンシュッツ副頭領、キア、ウルマン、ルーデルが見える、それにメルカッツ提督。女性が一人一緒に居るな、あれがテオドラか、イェーリングの話じゃかなり厄介だって聞いているけど……。リスナー所長の表情が一段と厳しくなった。困ったもんだ、親っさんの周囲には二十人程度しかいない。相変わらず親っさんは小人数で動く。
大体このオーディンには十隻程度の小艦隊で来た。他は皆辺境に戻してしまったのだ、無防備にも程が有る。本来なら最低でも百隻は護衛に欲しいところだ。どうも親っさんは自分の事に関して無頓着に過ぎる、或いは大袈裟にされるのが嫌いなのか……。
親っさん達が出口に近付く、そしてその周りを政府の警護の人間が固めている。俺達も親っさんを迎えるために出口に近付いた。政府に護衛される海賊か……。また噂になるな、新たな伝説の誕生だ。
「親っさん、御苦労様です」
「御苦労さまです!」
リスナー所長の声に続いて俺や他に迎えに来た人間が挨拶した。親っさんが微かに笑みを浮かべて頷く。多分苦笑だろうな、親っさんはこういうの苦手だから。
「待たせましたか、リスナー」
「いえ、それほどでは。それよりも不用心です、もう少し警護の人数を増やしてください」
リスナー所長がアンシュッツ副頭領に視線を向けた。どうやら所長は親っさんではなく副頭領に言っているようだ。副頭領もそれが分かったのだろう、苦い表情を浮かべた。
「親っさん、リスナーの言う通りです。不本意かもしれませんが周りを安心させるのも頭領の仕事です」
「その通りです、地球教、フェザーンが親っさんを狙っているという情報もあるんです。政府もそれを知っているからこんなにも警戒しています、もう少し注意してください」
アンシュッツ副頭領とリスナ
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