41話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (5)」
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パーティを組んでいたってわけね」
「はい」
クオリが視線をユーゼリアに戻した。にこりと笑う。
「全然面白くもありませんが、これがわたしの全てです。だから、自画自賛のようですけど、魔道士としてはかなりの戦力になれるかと思いますよ」
「…そうみたいね。古代魔法って、どれくらいの数使えるの?」
「全部で20種類くらいです。あまり沢山では無いんですけど…」
「十分だわ。古代魔法って効果がとても大きいんでしょう? 噂に聞く限りだと」
「そうですね。威力の面ではかなりのものかと」
見てみたい。
一魔道士としてそんな衝動に駆られたが、一般に知られていない魔法である以上、闇雲に使うわけには行かない。何のためにわざわざ暗号文にして後世に伝えられたかを考えれば、なおさらだ。
古代魔法は、例えば魔獣と遭遇したなどの状況以外では使えないだろうと思った。特殊な魔法は彼女がエルフであることをばらしやすくなってしまうかもしれないからだ。本人にその意志がない限り、無理強いさせるようなことはできない。
「けっこう長く話し込んでしまいましたね」
「…うん。打ち明けてくれて、ありがとう。……ん? じゃあクオリって今何歳!?」
「今年で多分103になります。人間でいうと、だいたい30歳手前あたりですかね。それよりそろそろ休憩挟みませんか。アッシュさん、止めてもらえます? …あれ、アッシュさーん?」
絶句したユーゼリアを放って小窓から顔をのぞかせると、腕で顔を隠したまま(おそらく木漏れ日が眩しかったのだろう)動かないアシュレイの姿。顔は見えないが、静かに上下する胸で、彼が寝入っていることがわかった。
「寝てますね。そっとしておきましょうか」
「珍しいわね……疲れてるのかしら。ああでも、アッシュがいないと馬車が止まらないわ」
そんな会話をしていると、馬車がだんだん減速し始めた。あれっと小窓を覗くと、特に障害物もないのにシュラが道の端に馬車を寄せて足を止めていた。
「あ、ありがとう、シュラ」
普段は無視するのに、この時はシュラが嘶き返した。
――礼はいいから、静かにしろ。
なんとなく、そう言われたような気がしたユーゼリアだった。
だが気をつけていても流石に馬車の扉が開くと気配でわかるらしく、気を使われていた当の本人は目が覚めた。
「ん、休憩か?」
「あ、うん。そう。アッシュもお茶はいかが?」
「頂こうかな」
ユーゼリア特製の紅茶は、鍋で沸騰した熱々のお湯のおかげでまたアシュレイの舌を火傷させ、悶絶するアシュレイと声を上げて笑うユーゼリア、吃驚するクオリと、賑やかな休憩づくりに一役買ったのは、いつものことである。
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