40話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (4)」
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置きに。1日置きだったのが、週に1度に。そして、ついには月に1度来るか来ないかになりました。
週一になるあたりから、わたしは理解しました。
ああ、とうとう彼もわたしから遠ざかってしまうのか――
その頃には、もう父とも数ヶ月顔を合わせていませんでしたから、わたしがお話をする相手がいなくなったも同然でした。兵は、わたしを恐れて一言も喋りませんでしたから。
父に恨みはありませんでした。むしろ、娘が罪を犯して、表で糾弾されたのは父だっただろうから、申し訳ないという気持ちしかありませんでした。
そうしてとうとう彼が来なくなってから2ヶ月ちょっと。兵が、食事と共にある紙をトレイに乗せて渡しました。外部からの物の受け渡しは全て彼らがまず目を通し、妙な魔法や暗号が無いかどうか確かめるものですからね。
「紙には、こう書かれていました。『僕は夢を叶える為に里を出ることにした。君を置いていく形になってしまって、本当に申し訳ない。牢から出させてあげるには、僕に力が無さ過ぎた。だが、再び里に戻ってきたら、絶対に君を牢から助け出す。だから、その時が来たら、一緒に旅に出ないかい?』紙は、今も持っているんです」
少し頬を染め、恥ずかしげに微笑むクオリは恋する少女に他ならない。
(いいな、そういうの)
ユーゼリアは優しくその姿を見つめていた。
ユーゼリアの出生で現状を受け入れてくれる男性など、いないだろう。何せ、共にいるだけで常に命が狙われているのだから。
(むしろ、巻き込んじゃいけないもの)
だから今までソロだったのだ。
――じゃあ、アッシュは?
ふと頭に浮かんだ黒髪の男の姿をかき消すように、ユーゼリアは頭をブルブルと振った。
(違う違う! アッシュは私から一般常識を教わり終わったら、そのままお別…れ……)
ふと、気付いた。
彼がいなくなれば、また灰色の日々に戻るのだろうか。クオリは多分、フラウというエルフに出会えればそこでユーゼリアとは別れるだろう。
そうしたら、また、独り。
(……それは)
嫌だ、と思った。
(あれ、私いつの間にこんなにわがままになったんだろ)
確かにアシュレイは強いが、彼だって無敵ではないのだ。小さな掠り傷から毒を受けて、死に至ることだってある。
(……コルトみたいに)
どんなに沢山の敵でも、どんなに大きな魔物でも、必ず幼いユーゼリアを守ってくれた、あの広い背中は、たった一本の毒矢に倒れたのだ。
我に返ったクオリが咳払いをした。
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