39話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (3)」
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本当に運の良いことに、ちょうど内蔵魔力が切れたときにわたしは階段を上ってきていたのです。
思ったよりずっとすんなり中に入れたわたしは、そこの蔵書の少なさに少し落胆しました。“立入禁止”の部屋は狭く、そうですね、シシームで泊まった宿の一部屋くらいの広さしかないのです。簡易ベッドとクローゼットをおいたらもう何も置けないような、小さい部屋。
ただ、当然その狭い部屋にはベッドもクローゼットも置いてありませんでした。あるのはびっしりと並んでいる書架。ぎゅうぎゅう詰めに本は入れてあり、入りきらないものは積み上げられて下に放置されていました。階下の整然と並べられた本と比べると、まったく扱いが悪すぎます。が、埃をかぶっている本からは、何か不思議な力が宿っているように感じました
「わたしは心を躍らせて近くの書架から本を一冊抜き取りました。今でも覚えています、開いたときのあの衝撃を。中には……」
ゴクリとユーゼリアの喉が鳴った。
「中には?」
「中には……航海記が書いてあったのです。手に取ったその本は、航海日誌でした」
「……は?」
拍子抜けしたようなユーゼリアの顔に苦笑すると、クオリは続けた。
なにしろわたしは未だ嘗て“海”という場所に行ったことは愚か、見たことすらなかったものですから、初めのうちはそれが何かの日記であることしか分からなかったのです。どうやら内容が海なるものについて書かれてありそうだと分かったとき、わたしはそれはもう落胆しました。幻滅と言っても良かったでしょう。
しかし次に湧いた疑問が、なぜこんなものがわざわざ結界を張ってまで立ち入りを厳禁した場所に置いてあったのか、でした。内容は名も知らぬ島々を巡った航海記。海の書物がエルフの里にあることも不可解でした。航海記の割に薄い本というのもひっかかりました。
そしてわたしがようやくそのことに気づいたのが、3日目の朝。あれから毎朝魔力切れの時間帯を狙って会員制の階に足を運んでいたわたしは、閃いたのでした。
封じられていた書架にあった本は、航海日誌に始まり、料理のレシピ、恋人との手紙のやりとりなど、まとまりが無く、本気でなぜこんなものが保管されているのか分からないものだらけでした。中には愛娘の成長日記なんてストーカーじみた内容のものまであったのです。……何月何日何曜日、愛しい愛しい我が娘が今日はいつもより7分遅い起床だった、とか、今日は娘が学校で鉛筆の芯を2回折った、とか。
わたしが閃いたきっかけは、あまりにも関連性の無さ過ぎる本達が同じ場所に積んであった、ということでした。
あの本は全て、れっきとした魔導書だったのです!
全てが独自の暗号で書かれており、解読は難を極めましたが、と
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