ALO編
episode2 思い出の行方3
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バカ高く、並大抵の金額では手が出ない額だった。しかし有難いことに俺のストレージに表示されたユルド……あの世界では、「コル」と呼ばれていた通貨は、掃いて捨てても一向に構わんようなレベルの桁を表示していたので、なんの問題もなくストレージぶんくらいの倉庫を借り受けられた。
(にしても、こんなに金あったかな、俺)
最初俺はこの桁が不思議だった。
俺が最後に持っていたSAOでの金額は確か、七十五層攻略戦の直前にエギルが今までの滞納分として渡してくれたものだったはずだ。それは確かに巨額ではあったものの、それでも今の俺の所持ユルドから見ればおよそ半分ほどにしかならないはず。
なぜこんなに増えているのか。
というか、この数字は一体どこから来たのか。
一向に覚えのないその数字とにらみ合い、そして。
「……もしかしたら、アイツらか?」
考え抜いて、ある一つの可能性に思い至った。
(俺が、ギルドリーダーだったんだよな……)
ギルド、『冒険合奏団』。
かつて俺の最愛の人が創り、率いてきたそのギルドは、あの事件以降もシステム的には消滅したわけではなかった。彼女の除名のあとは、名目上サブリーダーとして登録されていた俺が持ちあがりでリーダーになったはずで、その俺がギルド解散の操作をしていないからだ。
全く気付かなかったが、日頃の俺の雀の涙程の稼ぎからもギルドへの上納金が引かれていて金庫へと溜まっていき……それがギルドの貯金として溜められていたというわけだ。
そしてこの桁違いの額、勿論俺だけが稼いだものではない。
と、いうことは。
(どんだけ稼いだんだよ、あの二人……)
思わず苦笑いをする。
脳裏に浮かぶ、二人の顔。いつも体育会系の元気のいい笑顔の男と、何を考えているのか分からない無表情の美少女。あの二人は一体、何を考えてここまでの金を稼いだのか。俺が使いもせずにただただ溜めこむだけだった資金を、どんな気持ちで納めていたのだろうか。ギルド、『冒険合奏団』の一員であり続けてたのだろうか。
苦笑するしかない。
(また会ったら、二人にはなんか礼をしねーとな…)
ともかく。
そのおかげで俺は、バカ高い倉庫も自由に使うことが出来て。
大切な思い出を、しっかりと……一時的とはいえ……とっておくことができたのだった。
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