第八章
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第八章
「じゃあまたね」
「はい、また」
二人にしかわからない話をする。だがここでコンセプシオンはイニーゴが隠れているその時計のところに夫の姿を認めたのだった。
「あら、帰ってたの」
「どうしますか?」
「まだ私達には気付いていないし」
彼女にとっては好都合であった。
「だからここは」
「素知らぬふりですか」
「貴方はただここを通り掛かっただけよ」
そういうことにしてしまうコンセプシオンであった。
「それで私は店番をしていて」
「はい」
「そういうことにしましょう」
配役をすぐに決めてしまったのであった。
「そういうことでね」
「わかりました。それじゃあ」
「後は」
さらに考えたうえで言うコンセプシオンであった。
「偶然を装って旦那の手伝いに行って頂戴」
「ええ。わかりました」
ラミーロは彼女の言葉に素直に頷くのであった。
「それじゃあ」
「さて、これでいいわ」
コンセプシオンは息を整え汗を拭きながら言った。
「後はいいようになるわ」
彼女の言った通りであった。ラミーロはすぐにトルケマダとゴンサルベのところにやって来て。本当に何気ない調子でこう言うのであった。
「どうしたんですか?」
「ああ、ラミーロ君」
トルケマダもここで彼に気付いたのであった。
「まだ待っていてくれたのか」
「ええ、そうなんですよ」
こうトルケマダに答えるのであった。
「それでどうしたんですか?」
「いや、イニーゴさんがね」
彼はその時計の中に隠れているイニーゴを指し示して言うのであった。
「時計の中から出られないんだよ」
「そうなんですよ」
ここでゴンサルベもラミーロに話す。
「引っ張っても中々出て来れなくてですね」
「そうなんですか」
それを聞いて考える顔になるラミーロだった。
そうして少し考えたうえで。こう二人に話すのだった。
「それじゃあですね」
「ええ。それじゃあ」
「どうするんですか?」
「二人が駄目なら三人ですよ」
二人に言ったのはこのことだった。
「三人で。引っ張ってみましょう」
「ああ、そうだね」
「それがいいですね」
二人も彼の今の言葉に頷くのであった。
「それじゃあ早速」
「三人で引っ張りますか」
「はい。じゃあ」
早速三人で時計の中のイニーゴを掴む三人だった。そうして。
「いいですか」
「はい」
「何時でもです」
二人がラミーロに対して答える。
「いけますよ」
「どうか掛け声を」
「ええ。じゃあ」
ラミーロは二人と息を合わせる。そして。
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