第四十六話
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共々、自分の娘と近所のお兄さんがじゃれあっているのを見る夫妻のようにただ笑っているだけで、苦手な子供を相手にしている俺を助けてくれる様子は全くない。
駄目だこのバカ夫妻、早く何とかしないと……と思ったその時、俺の腰あたりに埋めていた顔を上げたユイと、どうすれば良いか解らない俺が目があった。
「ショーキ……こわいの?」
ユイが突如として放った言葉に、心臓が止まりそうになってしまうほどの驚きが俺の胸を貫いた。
どうやらユイの声は小さいために、近くでニヤニヤと笑うキリトとアスナの耳には聞こえていないようだった。
確かに子供の相手は苦手ではあるにしろ、無論、今抱きかかえられる位置にまで接近しているユイのことが怖いわけではない。
問題は、ユイの黒色の瞳を見ると、俺の心の中が読まれているような……心の中で『怖い』と叫んでいる弱い自分を、この小さい子供にすら見透かされているような錯覚に陥ってしまうことだった。
「俺、は……」
「ショーキは弱くないし、みんなをたすけられるよ」
――なんなんだ、こいつは。
そんなことを思ってしまった直後、突然目の前の少女が人間ではない存在に思えてしまい、気づくとユイをアスナの元へ突き飛ばすかという勢いで渡していた。
「ショウキくん。苦手なのは解ったけど、もう少し大切に扱ってあげないと」
「……すまない。お詫びのつもりじゃないが、これを」
システムメニューから俺が多用しているメモ帳を取り出すと、《はじまりの町》の教会のことについて書かれているページを一ページ破いたキリトに手渡した。
キリトのようにネットゲームに詳しくはなく、アスナのように抜群に頭が良いわけでもない自分用に使っているメモ帳だったが、75層ともなると随分このメモ帳も使い込まれたものだ。
「《はじまりの町》の教会についてのメモだ。子供のことなら大体ここに行けば解るはずだ」
「ありがとうショウキ。……わざわざ、すまなかった」
第一層でキリトに結果的には命を助けてもらったことに比べれば、こんな頼みぐらいならば何でもないのだが、そんなことを口に出すのは気恥ずかしい。
「代わりと言ったら何だが、75層の探索は任せてくれ。これから一週間ぐらい、攻略組の連中と迷宮区をしらみつぶしに探索してくる」
ユイの家族探しに最後まで付き合えない理由は、この三ギルド合同の一大依頼があるからだ。
《血盟騎士団》・《聖竜連合》・そして、再び攻略ギルドに返り咲いた《アインクラッド解放軍》の実力派たちで構成されたパーティーで、75層の迷宮区という迷宮区をローラー作戦によってボス部屋を発見・偵察するとのことだ。
「そうか……今は攻略まで任せちゃってるのか……」
「だったら、さっさと復帰する
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