第六章
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第六章
「もう少しね」
「別にいいじゃない」
コンセプシオンもそんなゴンサルベの顔を見てくすりと笑いながらラミーロに言うのであった。
「今日はのどかだし別に」
「奥さんがそう言うんならいいですけれど」
彼女が言うならばラミーロに反論はなかった。
「それじゃあ」
「ええ。そういうことでね」
「仕方ないな」
ラミーロは今度はゴンサルベを見て言った。
「じゃあそういうことでね」
「ええ。御願いね」
また彼に告げるコンセプシオンであった。その後でラミーロは彼女のまだ汗に濡れている顔や紅い唇、そしてその首筋や肩、それに黒く上にした髪を見て思うのであった。
「いいよな」
彼女の色香を見ての言葉であった。
「あの人と時計屋やれる旦那さんが羨ましいよ、全く」
「それでラミーロさん」
「はい」
またラミーロに言ってきたコンセプシオンであった。
「お客さんが来たから」
「あっ、そうなんですか」
言われてはっとするラミーロであった。見れば確かに年老いた男が来ていた。
「時計を一つ御願いね」
「ええ。それじゃあ」
こうしてラミーロはまた店の中に入るのであった。そうして時計を取りに行く。ゴンサルベは恍惚として何か詩を言葉にしだしていた。コンセプシオンはここでイニーゴが時計の中に隠れているのに気付いたのだった。
そうして彼に問うのであった。
「どうしてこんなところに?」
「奥さんを驚かせようと思って」
だからだというのである。
「それで中に入ったんですが」
「出られそうですか?」
「無理です」
入ることには入ったが、であった。
「とても。これは」
「そう。困ったわね」
それを聞いて腕を組んで考える顔になるコンセプシオンであった。
「それじゃあどうしようかしら」
「はあ」
「ラミーロさんなら何とかしてくれるかしら」
ラミーロの名前を自分で出したところでこうも思うのだった。
「そうね。顔もいいしスタイルもいいし頼りになるし」
こう思いだすとすぐにさらに考えを進めさせるのであった。
「何か来ないし。かわりに」
待っている恋人が来ないのでラミーロを、というわけだった。ここでそのラミーロが時計を持って帰って来て老人に時計を渡してお金もちゃんと受け取る。そのしっかりとした様子を見てにこりと笑ってそっと彼に歩み寄るコンセプシオンであった。
「ねえラミーロさん」
声が幾分か甘いものになっている。
「一ついいかしら」
「何でしょうか」
「仕事は一段落ついたし」
「はい」
「またお店の中に来て欲しいの」
こう彼を誘うのであった。
「お店の中にね。いいかしら」
「お店の中にですか」
「そう。二人でね」
目は艶を含んだものになっていた。
「いいかしら。
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