GGO編
百十六話 温もりと殺人鬼の瞳に映るモノ
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の戦闘をしている以上、何時までもやっている時間も……本当は無いのだ。
なら、何故使わないかと言うと……
『っは……』
自分自身が、それを使う事を自制しているからだった。
理解するまでは躊躇い無く使っていたそれを使う事を、今リョウは急激に躊躇い始めていたのだ。
『アホらしい……』
理由は、分かっていた。
集中を理解した理由。懸念となって自分自身の中にしこりのように出来たそれが、なんとも珍しい事に、リョウ自身にリミッターのような物を掛けていたのだ。自分ではそんな物はらしくないと思っているにも関わらず、しかし無意識に“集中”を使う事を躊躇っている自分が居た。
『負けりゃんなもん意味もねぇし……』
ならばすぐにでも使ってしまうに限る。何故ならこれは普段とは違い、負ける事の出来ない。正真正銘に、人間二人の命が掛かった戦闘なのだから。
「…………」
しかし、迷う。今までもこれを使う度に抱いていた懸念が、これを“理解”した事で更に増大している。
緊張しているのか、あるいはそれ以外に理由が有るのか、右手が妙な熱を持ち……。
「……?」
と、其処まで考えてふと気が付いた。おかしい。右手が不自然な程に温かく感じる。VRにおけるアバターは、内部から確認出来る生理現象はあまり省略されていない為戦闘によって現実世界での体温が上がって居るならある程度身体が火照って感じたとしてもまあおかしくはない。だがこの温かさは性質が違う。自分自身の身体が火照って居ると言うよりは、どちらかと言うと右手だけが外部から何かで温められているかのような……
「……あ」
唐突に気が付いた。この温かさに、自分は覚えが有った筈だ。
────
『りょーくん!いっしょにかえろ!』
『ぇ、あ、おぅっ!」
────
「……はぁ。ったく――」
もうずっと昔の記憶の奥にまだ染み付いたままの温かさが、今感じているその温かさと重なる。
根拠は無い。けれども、確信は有った。
どうしてそんな事が起きたのか想像して、呆れたように溜め息混じりの声を紡いだ。けれども言葉とは反対に――
「――あの馬鹿」
右手を見るように俯いたその顔は、ニヤリとした何処か嬉しげにも見える笑顔を浮かべていた。
「what?」
「ん?あぁ……いや、何でもねぇよ。そうだな、流石にいい加減失礼な気もするし……」
言うが早いが、リョウは体を若干前傾形にして、両腕をだらりと垂らすと、小さな声で言った。
「やるか」
「…………!」
「吸ううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ……吐あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
過剰なほどの、いっそ異常と言ってもよいくらいの深呼吸が、冷たく、乾いた空気の中に響き渡る。そうしてその音に合わせ
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