第三章
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第三章
「この詩を聞いて下さい」
「詩を?」
「貴女のその美しさを詠ったものです」
頼まれてもいないのにこう言うのである。
「この詩こそが」
「ええ」
その詩がはじまろうとするところで嫌そうな顔になるコンセプシオンだった。その苛立ちがさらに高まっているようである。その苛立ちの中で呟きもした。
(全く。もうすぐ来るかも知れないのに)
「ああ、麗しのコンセプシオン」
その中でゴンサルベの詩がはじまった。
「貴女のそのお姿を見ていると」
「コンセプシオンさん」
だがここでラミーロが店の中から出て来た。そうしてそのうえで彼女に声をかけてきた。
「時計かけておきましたよ」
「あら、有り難う」
コンセプシオンはそれを受けてゴンザルベから顔を放して応えた。
「おかげで助かったわ」
「ええ。それじゃあ後はゆっくりと」
「いえ、ちょっと待って」
休もうとするラミーロにさらに言うのだった。
「まだやって欲しいことがあるのだけれど」
「あれっ、まだあるんですか」
「そうなの。別の時計をここに持って来て」
「別の時計をですか」
「大きければ何でもいいわ」
条件はこれだけであった。
「人が入るだけの大きさがあればね」
「人が入るだけですか」
「そうよ。私も行くわ」
自分もというのだった。
「それでどの時計がいいのかね」
「選びますか」
「そうしましょう」
こうして二人はゴンザルベをよそに一旦店の中に入った。そうして二人でかなり大きな壁掛け時計を持って来てそのうえでゴンサルベに対して言うコンセプシオンだった。
「ゴンサルベさん」
「あっ、はい」
今まで一人恍惚として詩をろうじていたゴンサルベはコンセプシオンに応えた。
「何でしょうか」
「悪いけれどこの時計の中に入っていてくれないかしら」
「時計の中にですか」
「ええ。後で二人で会いたいから」
くすりとした笑みを浮かべて彼に告げるのであった。
「だから御願いね」
「二人で御会いできる」
それを聞いて下心を覚えるゴンサルベだった。この辺りは実に素直である。
「それでは」
「それまでは時計の中で待って欲しいのよ」
声には誘うものさえ入れてきていた。
「だからね。時計の中に」
「畏まりました」
ゴンサルベはまた畏まって一礼してみせて応えるのであった。
「それではいざその中に」
「はい、どうぞ」
コンセプシオンが開けたその時計の中に入るゴンサルベであった。だがその彼が時計の中に入ると口髭を生やして立派な服を着たやけに太った男が出て来たのであった。
「いやあ、コンセプシオンさん」
「あっ、これは」
「ドン=イニーゴさん」
コンセプシオンとラミーロはその太った男に対して挨拶をした。
「どうして
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