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なりたくないけどチートな勇者
35*昔の話
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とグルーデックを運びながら帰るのには狭くてな、大回りしながら帰ったら着いた時はもう日も暮れかけていた頃だった。

街に着いた俺達は役場へ赴き、死体をまず俺達の新たな服をつくるための素材となる部分を剥ぎ取り、使わない部分を役場に……だぁかぁらぁ、もんはんって一体なんなんだ?

なにげに君は話の腰をへし折るな。

とりあえず、使わない部分を役場へと渡して報酬を貰い、俺達は宿へと戻ったんだよ。

すると宿の前に、前に見た時に比べて限りなく窶れ、目を泣き腫らしたリリスとレイラがまるで世界の崩壊を目の当たりにしたような顔で立っていたのだ。
絶望を全身から滲み出している彼女達を周りの客はみんな避けるように進んでいた。

そして彼女達は俺達を見つけると、一瞬眼を見開くやいなや涙を流しながら駆け寄ってきて、俺達に縋り付いてきた。
そして放った第一声が

「お願いですから私を見捨てないでください!なんでもしますから!いい子になるから私をあなたの側に置いて下さい!!」

「ちゃんと言う事聞くから!わがまま言わないから!お願いします!私を捨てないで!置いてかないで!嫌だ!離れたくないよ!嫌だ!嫌だぁ!!」

上からリリスにレイラである。

さぁ考えてみようか、今はもう太陽も沈みきる直前くらい、つまり夜の一歩手前だ。
するとだいたいの者は家へと帰るだろう。

だが、この街に家がない、俺達と同じく旅をしている者達はどうだろうか。

当然宿へと向かう訳だ。

宿へと向かう者、宿の中で休む者、果ては宿の従業員。
そんな中で、窶れているとは言え美少女に足にしがみつきながら、“捨てないで”と泣きながら懇願される若い男性が、しかも二名も。

さてさて……何名の者に俺らの姿が見られたかな?
そして皆さんどう思ったかな?

答えは火を見るよりも明らかだ。

だから俺達はかなり焦った。
いや、焦ったなんて生易しいものではない、それ以上の、言葉で表せない程に混乱した。

だから俺は急いでリリスを抱きしめて、彼女が落ち着くように話しかけた。

「大丈夫だからリリス、俺はおまえを絶対に捨てない。いつもいつも溢れんばかりの愛を貰ってるんだ、そんなおまえをどうして捨てようか。……まぁ、一度に貰うには多過ぎるがし、周りをみて節度も弁えてほしいけど……っと、ごめんよ。大丈夫、俺はおまえをいつも変わらず愛してるよ」

もはやなれたものである。
まぁ、焦った結果つい本音が少し出てしまったが。

だがそんな俺の言葉も今の彼女には効果てきめんで

「ほ、ほん…とう?…わ、わが、わがっだ……ぢゃんど…ぐずっ……じゃんどぜづどを…わぎまえて……こうどうじまずがら……だがら……だがら……」

むしろいい方向へと転がった。


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