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なりたくないけどチートな勇者
35*昔の話
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います!報酬は必ず支払いますので!!」

キースの顔が引き攣っている。

そりゃあ昼時の食堂だ、こんな大声で言われたら嫌でも周りに知られてしまう。
しかも馬鹿(キース)が持っているのは、この世界でも使ってる奴などそういないであろう大槌だ。

ここでこの話を断ったら、俺達には色々と悪い評判がつくであろう。

……全く、これで一体何度目だ?
だからその槌をとっとと捨てろって言ってるのに。

「……わかりました、その依頼引き受けさせていただきます。で、件の魔物についてや土地の状況等の情報を教えていただきたい」

……ここで悪い評判覚悟でこの話を断っていたなら、今の俺達の関係は全く別物になっていたと断言できる。
それくらい重要な出来事だったのだ。


************{☆


依頼の内容は、グルーデックの討伐。
知ってのとおりグルーデックは……なに知らない?

あー、じゃあ説明するが、グルーデックとは主に森の奥深くに生息する飛竜の一種でな、別名瞬竜(しゅんりゅう)と呼ばれている程に素早い竜だ。
見た目は黒く、長い刺のついた尻尾を持ち、ただでさえ速いのに怒ると目が赤く光りさらに速く……なに、なるがくーが?
なんだそれは。

まぁとりあえずとてつもなく速い魔物だと思ってくれていい。
手なずけられたらとても良い足として使えるのだが、まぁ手なずける事などそうそうできないので討伐という形になる。

だがしかし、ここで問題が発生すした。

「……あいつら、どうする?」

そう、リリスとレイラについてである。

リリスは知ってのとおり、根っからの魔術師だからか、運動能力はからっきしでな。
グルーデックの速さについていけず、魔法を唱えている隙に叩かれるのがオチだ。

そしてレイラ。
こいつもこいつで根っからの拳士(けんし)なのだが……欠点として足が遅い。
反射神経もいいし、拳の威力ならそこらの魔物なら一撃で、グルーデックだって五発も殴れば簡単に屠る事が出来るだろう。

だがなぜかどうにもこいつは速さがない。

しかも肉体強化魔法の才能が全くないので、リリスに補助をしてもらって何とかいつもの俺達についてこれるくらいに足が遅いのだ。
しかも場所が森だから、翼をつかって空からの攻撃もできない。

つまり、あいつらを連れていくと足手まといになるという訳だ。

「……置いていくしか、ないよなぁ」

すると必然的にこういう答えがでてくるのだが……

「……あいつらが素直に待ってくれると思うか?」

「いや、絶対こっそりついてくる。だから困ってるんだ」

こういう事である。
となるとこれからとる行動は一つしかなく、つまりそれはあいつらに知らないようにする事である。


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