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トゥーランドット
第二幕その三
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っくりと降りた。皇帝のいる場とカラフの中間のところで止まった。長い衣が階段にまで垂れている。
「今度こそ貴方の命が落ちる時」
 そして口を開いた。
「炎の様に燃え盛るが炎ではなくある時には思わず我を忘れて賢き者も愚かな者もそれに悩み心は燃え盛り続ける。それが為に身も打ち振るい紅に燃える。それは何か」
「・・・・・・・・・」
 カラフは沈黙してトゥーランドットを見据えた。
「さあ、答えなさい」
 トゥーランドットはカラフに対して言った。
「若者よ、答えよ。さもないと命がないぞ!」
 民衆は完全にカラフの側に立って言った。
「若者よ、さあ早く」
 皇帝も彼に対して言った。他の者も同じであった。
「それは皆が持っている者だ」
 カラフはトゥーランドットを見据えたまま毅然として言った。
「どの様な冷たい心の持ち主でもそれは持っている。それは血潮だ、激しい血潮だ!」
 トゥーランドットはその言葉に対し大臣達の方を振り返った。彼等のうち一人の巻物がゆっくりと開かれる。
「その通りです」
 その大臣は静かに答えた。
「よし、あと一つだ!」
 民衆はそれを聞き叫んだ。
「若者よ、もう少しだぞ!」
 ティムールもリューも顔を明るくさせた。だがそれは一瞬であった。
 トゥーランドットが下を一瞥した。皆その冷たい眼差しの前に沈黙してしまった。
「成程、貴方は知恵も備えておられるようですね」
 そう言うとゆっくりと下に降りだした。
「しかしそれも生半可なものでは持っていないのと同じ。そう、そしてそれは結局貴方の命を助けることにはならないのです」
 そしてカラフのところに降りてきた。
「それでは最後の謎です。これで貴方の運命が決まります」
 カラフの横に来て言った。驚く程整った美貌だ。
 しかしそれは氷の美貌であった。冷たく、人が持っている筈の温かみなど何処にもない美貌であった。
 カラフはその顔を見た。彼女の顔は丁度自分の顔の位置にあった。
(この顔に人の心が宿ったならば)
 彼はふと考えた。
(一体どれ程美しいのだろう)
 心の中でそう考えた。そして心を奮い立たせた。
「それでは答えなさい」
 彼女は周りを凍らせるような冷たい声で言った。
「炎より生まれ氷より冷たい。それは貴方を助けこの国の主とするのも貴方の命を奪い月に捧げるのも思うまま。見ればそれを聞いただけで貴方の顔は青くなった」
 カラフはそれを黙って聞いていた。
「全ての望みが絶たれた貴方にお聞きしましょう。この炎より生まれ氷より冷たいものとは一体何か」
「炎より出て氷より冷たい!?そんなものある筈ないだろう!」
 民衆がそれを聞いて言った。
「駄目だ、やっぱり駄目なんだ!」
「静まりなさい、民衆達よ」
 彼女は民衆達に対して言った。
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