第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
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蜂の子もっ! 蠍もっ! 冬虫夏草もっ!! 他にも色々っ!!」
「……あなたも大変ですわね。じゃあ、これを作ったのは、やはり―――」
「桜よ」
「サクラね」
「「………………」」
二人の視線が交わり……沈黙が満ちる。
睨み合う二人の視線が、テーブルにズラリと並ぶ料理に移動し、
「「……はぁ」」
示し合わせたように、二人はガクリと首を落とし、溜め息を吐く。
「今日の朝食は一人で作ると言った時から怪しいと思っていたのだけど……まさかここまで直接的なものを出すとは……」
「ですが仕方ないんじゃありませんの。シェロが帰ってくるのは久しぶりですし、その分張り切ってしまったのでしょう…………ちょ、朝食がこれと言うことは、も、もちろんしぇ、シェロもこの料理を食べたと言うことですわよね?」
「……まあ、そうだけど……何期待してんのよ」
微かに頬を染めながら、あさっての方向を向いて何気ない様子で尋ねるルヴィアを、凛はジト目で睨み付けた。ルヴィアは凛の視線から逃れるように、テーブルの料理に顔を向ける。
「き、きき、期待なんかしてませんわよっ!! た、ただ……噂に聞くこれの力がどれほどのものかと……そ、そうですっ!! 純粋な学術的興味からですわッ!!」
「一瞬で分かるような嘘をつくなっ!!」
「嘘とは失礼ですわねっ!!」
「誰がどう聞いても嘘じゃないっ!!」
「それはあなたの頭が可笑しいからですわっ!?」
「そんなことはないわよっ!! ほらっ士郎もそう思うでしょっ!! 言ってやりなさい! この色ボケ発情貴族にっ!! あんたのほ……う……が? って士郎は?」
「シェロっ!! どう聞いてもリンっの方が可笑しいです……わ……あら? シェロは何処に?」
二人は額が触れ合いそうな程の至近距離で怒鳴り合っていたが、同時に士郎がいるはずの場所に顔を向けた。しかし、そこには士郎の姿はない。凛がルヴィアの手から取り戻した時、投げ捨てた筈の場所には、士郎の姿は何処にもなかった。二人の首が同時に傾げた時、背後からふすまが開く音が聞こえ。二人が背後を振り向くと、そこには、ぐったりとした士郎を引きずる桜の姿があった。
「桜っ!!」
「サクラッ!!」
二人の声に、桜はビクリと身体を震わせると、恐る恐るといった様子で顔を上げた。
「見つかっちゃいましたか」
えへへと苦笑いしながら桜は小首を傾げる。
「『見つかっちゃいましたか』―――じゃないっ!! 何やってんのよあんたはっ!?」
「シェロを何処に連れて行こうとしてるのですかっ!?」
「私の部屋ですけど?」
何当たり前のことを聞くんですか? と不思議そうに眉根を寄せた桜に、凛とルヴィアが詰め寄っていく。肩をいからせ近付いてくる
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