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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
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。……これ以上ないくらい落ち着いているっていうのに」

 先程までの喧嘩を全く感じさせない和やかな様子で笑い合った二人は、ゆっくりと士郎に近付いていく。
 にこやかに笑い近寄る二人に、底知れぬ恐ろしさを感じた士郎は、迫る二人から出来るだけ逃げようと両手を突き出す。

「え、え〜と……その……な、お、落ち着け」
「ですから「だから落ち着いてるわよ」ますよ」

 士郎の口から悲鳴が漏れそうになった瞬間。

「シェロッ!!」

 スパンッと鋭い音と共に、士郎の背後の障子が開いた。障子に寄りかかっていた士郎は、突然開いた障子に身体のバランスを崩され後ろに倒れる。

「いっ、つつ」

 縁側の床に倒れた士郎は、倒れた時に打った頭を手で抑えながら薄目を開く。

「―――あっ」

 開いた視線の先には、白く細い足の姿が。

「シェロ?」

 段々と視線を上に上げると、そこには魅力の光景が……。
 闇の中でさえ存在感を示す黒いレースの下着の姿があった。

「る、ルヴィア?」
「まあ…………大胆ですわね」

 ぽっと頬を染めると、ルヴィアは頬に手を添え、股の間に顔を置く士郎に微笑みかけた。
 豪奢に輝く金の髪を、縦にロールした絢爛な美貌の持ち主―――ルヴィアは、足を曲げ倒れる士郎の身体を抱き起こす。

「シェロ……お久しぶりです……もう、わたくしをこんなに心配させるなんて……いけない人」
「あ、ああ。そ、それはすまなかっわぷ!」
「いえいいのですっ!! あなたが今、こうしてわたくしの胸にいるのですからっ!!」

 ルヴィアの豊かな胸に抱き寄せられた士郎は、もごもごと顔と身体動かすが、身体を拘束する力が思いのほか強く、向け出すことが出来なかった。
 士郎の身体の動きを胸と両腕で封じたルヴィアは、そのままの状態で立ち上がると歩き出した。 

「さあ行きましょうシェロっ!! 既に最高級のスイートルームを予約してありますっ!! 今すぐ二人の愛を確かめに行きましょうっ!!」
「何かってに持っていこうとしてんのよッ!!」

 士郎を持ち去ろうとするルヴィアを止めたのは、活歩からの凛の崩拳だった。明らかに達人の域にある拳打だったが、ルヴィアはそれを片手で受け止めた。明らかに不意打ちである攻撃を、冷静に受け止めたルヴィア。それはルヴィアが凛より実力が上と言うよりも、明らかな慣れを感じる。

「あらリン。いきなり無粋ですわね。愛する二人の行く手を阻むなんて」
「誰が愛する二人だっ!! 明らかに誘拐じゃないのっ!!」

 ルヴィアの胸に顔を埋め、ぴくりとも動かなくなった士郎を指差し、凛は激昂する。ルヴィアはそんな凛の様子に、自身の胸からでている士郎の後頭部をぽんぽんと叩くと、誇るように胸を張った。

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