第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
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加速する。
痛い程伸ばした手を光に……光の前に立つ人影に向かって声を張り上げた。
「―――っア!!」
光の前に立つ少女が、士郎の声にゆっくりと振り返り始める。
士郎はそれに応えるように腕を伸ばし。
「―――ッッ!! セイバーッ!!!」
「セイバーッッ!!!」
「えっ?」
指先に柔らかな感触を感じるやいなや、士郎はそれを掴み引き寄せた。引き寄せられ勢い良く士郎の胸に飛び込んできたそれを、士郎は逃がさないとばかりに強く抱きしめた。胸の中にある感じるそれは、すっぽりと腕の中に収まるぐらいに小さい。
「ちょ、ちょっと待ってくださいシロウっ?! ど、どうしたと言うのですかっ?!」
「っあ……ぅ」
胸の中で上げられる戸惑いの声を聞き、士郎は心臓を掴まれたかのような切ない気持ちに落ち入る。二度と聞けないと覚悟していた声。十年以上が過ぎたと言うのに、ハッキリと覚えている声。心を掴まれる強さと同じ力で、士郎はアルトリアの背に回した腕に力を込める。
「そ、その、し、シロウ? こ、混乱しているのは分かりますが、お、落ち着いてください。まずは私を―――」
「セイバーっ!!」
「っんぅ!」
士郎の胸に両手を当て、必死に離れようとするアルトリアを、士郎は逃がさないとばかりに力を込め抱きしめた。ぴったりと身体が合わさると、士郎はアルトリアの耳元で愛しさに満ちた声を上げる。それを聞いたアルトリアは、一瞬びくんと身体を震わせたが、顔を真っ赤にさせながらも、士郎から離れようと腕に力を込めるが、
「アルトリア……っ」
「っう!」
再度今度は名を呼ばれ、力が抜けてしまう。
ベッドの上、体だけを起こした士郎の胸に抱きしめられたアルトリアは、周りに誰もいないことを確認すると、おずおずと士郎の身体に両手を回し始めた
「まったく……随分と身体は大きくなったようですが、中身は反対に幼くなったんじゃありませんか?」
士郎の身体を確かめるように撫でながら士郎の背中に腕を回すと、諦めたように小さく溜め息を吐着ながら、アルトリアは士郎を抱きしめた。
「仕方……ないだろ……夢だと分かっていても……お前が俺の腕の中にいるんだ……」
「……夢じゃ……ありませんよ」
「……いいんだ……夢でも……セイバーと……アルトリアともう一度会えたのなら……」
「夢じゃないって言っているんですが……」
抱きしめ合いながら、それぞれ相手の肩に自分の顔を置き、耳元に囁きかけるように話し始める二人。 耳を震わせる、美しい声。
窓から差し込む日の光に照らされ、黄金に輝く髪。
花の香りが風に乗ったような、涼やかで香しい匂い。
折れそうなほど細い腰
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