第八章 望郷の小夜曲
第一話 ゆ、夢?
[13/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
ぶるっと身体を震わせる士郎に、イリヤは目を細め笑うと、手を取り走り出した。
「なら私と遊びましょうっ!! 行きたいところが一杯あるのっ!」
「お、おいイリヤっ!!」
急に手を取り走り出したイリヤに、慌てる士郎だったが、満面の笑みを浮かべ走るイリヤを見つめるうちに、強張っていた身体から力が抜け始めた。
自分の手を握る、白く小さな手。
日の光を反射させ眩いほどの輝きを見せる銀の髪。
抱きしめれば折れそうなほど小さく華奢な身体。
「……ぁ?」
不意に視界が滲むのに気がつくと、頬に濡れた感触を感じた。走りながら空いた手で頬に触れると、指の先に湿った感触がある。
「なみ、だ?」
小さな背中が、元気よく走っている。
それを滲んだ目で見つめながら、士郎は不意に湧き上がってきた感情に戸惑うような声を漏らした。
喜び。
悲しみ。
寂しさ。
懐かしさ。
安らぎ。
不安。
突如湧き上がってきた感情に、心が千々に乱れる。
何故そんな気持ちになるか分からず、戸惑う士郎を導くように、明るい声が響く。
「そう言えば言ってなかったね!」
肩ごしに振り返り笑いかけてくるイリヤの笑顔は、
「シロウッ! お帰りッ!!」
眩いほど輝いていた。
「んっ〜〜っ! 遊んだ遊んだっ!! 遊びすぎてもう日が暮れちゃったねっ!」
「ああ、これは家に帰るのが少し……いやかなり怖いな……」
背伸びをしながら川原を歩くイリヤの隣りを、肩を落としながら足を引きずるように士郎は歩いていた。青空は茜色に変わり。日は遠くに見える山に沈むように、その姿を揺らめかせている。涼やかな音を響かせる川に、滲んだ夕日が写りこんでいる。
「だったら私の城に来る? セラやリズも歓迎してくれるわよ」
「あ〜……リズはともかくセラがな……何でか知らないが、当たりが強いんだよな」
「何か覚えはないの?」
「…………ありすぎてどれだか……」
「全くシロウはもう」
ますます肩を落とし意気消沈の様子の士郎に、イリヤはくすくすと笑い声を上げると急に駆け出した。士郎から三メートル程離れた前まで行くと、走るのを止めたイリヤは、後ろに手を組みながら、歩き始める。夕日と川から反射してくる夕日の光り。二つの夕日を受け、イリヤの身体が紅く燃えるように光っているかのようだった。
士郎の前を、イリヤは小さく笑いながら歩いている。
「―――ねぇシロウ……今日は……楽しかった?」
唐突にイリヤが足を止めると、それに合わせるように士郎も足を止めた。
イリヤが上げた声は、先程までの明るい笑い
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ