追想〜聖騎士対聖騎士〜
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「スルトォー!」
倒れ付したスルトだが、まだ辛うじてHPは残っていた。しかし、赤黒い肌の至るところから深紅の血が溢れ、呼吸は細く浅い。右手には、ほとんど柄だけになった剣を握り締めていた。彼は、最後の力を振り絞り、指先で摘まんでいた何かを俺に差し出した。
「これを使ってくれ・・・・・・この剣の銘は『煉獄剣レーバテイン』。この剣が放つ炎でなければ、奴を倒せない。どうか、私の代わりに・・・・・・」
それはスルトが使っていたあの剣の破片だった。一メートル半近い破片は俺の手の中でみるみる形を変え、ついにはスルトの剣の完全なミニチュアになる。艶やかな黒革を巻いた柄を握り締めると、鍔の中心にあしらわれた宝石が緋く輝き、刀身が深紅の炎を噴き上げた。
緋。攻撃の色。殲滅の色。憤怒の色。戦いの・・・・・・色。
「行くぞ・・・・・・紛い物(レプリカ)」
「来い・・・・・・本物(オリジナル)!」
薄墨色の刃が空気を叩き、刹那の瞬間にトップスピードに乗る。翅を完全に折り畳み、紅く燃え上がる剣を腰溜めに構えて突進する様は、端から見れば緋色の流星に見えるだろう。
一瞬の交錯。俺の赤いレーバテインと、ロキの漆黒の剣は激しく火花を上げ、擦れあって後方に抜けた。
俺達は空中で激しく舞い躍り、交錯する度に剣を撃ち合わせ火花を散らす。ソードスキルを使うことすら出来ない超高速戦闘は、熾烈に舞い、熾烈に散る火花の様だ。
「速いな・・・・・・黒!」
「激しいな・・・・・・赤!」
数回目の交錯で鍔迫り合いに持ち込むと、そのまま螺旋を描いて飛翔する。紅い炎はロキの黒い剣の刀身にも這い登り、今にも溶かしてしまいそうだ。
一旦距離を取られ、黒い剣撃が撃ち放たれた。あらゆる光を飲み込む漆黒を、俺が放つ深紅の獄炎が上書きする。ここから先は、技術も剣の威力も関係無い。気合いと気合い、精神と精神の勝負だ。先に心が折れた方が・・・・・・敗北する。
「おあああ!」
「しゃあああ!」
右下からの一撃を、左からの斬り下ろしで弾く。心臓を抉る突きを、剣の腹で受け止められる。まだだ・・・・・・もっと激しく、もっと熾烈に、もっと猛々しく!
黒と赤。全く違う訳では無い、しかし決定的に違う二つの閃光が、お互いの世界を賭けて撃ち合い、噛み合う。炎と闇が、お互いの存在を賭けて互いの存在を消し去ろうとせめぎ合う。
その姿は何処か俺達の戦いと似ていて・・・・・・他に例えようが無い程、美しかった。
「綺麗だな・・・・・・もう、終わりにしようか、俺。」
「・・・・・・そうだな、俺。」
お互いの得物が、一瞬どくんと脈打ったのは、きっと錯覚ではないのだろう。ロキは、弓を引くようにぐぐっと大剣を引き、俺は灼熱の塊となったレーバテインを頭上
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