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形而下の神々
過去と異世界
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の奴隷だしな」

 そんなコトはどうでもいいんだ。と、その時グランシェがとんでもない発案をしてきた。

「しかしタイチ。俺は奴隷を買う事は賛成だぞ」

「はぁ!? 何言ってんだよ!!」

 いくら何でもそりゃあ人道的に無理があるだろ。と思ったが、グランシェは俺の驚きを誤解して受け取ったらしい。

「いや、確かに金はないけどな」
「そういう問題じゃないだろ。金じゃなくてさ、人道的に無理があるよ……」

 と、俺がグランシェに言うと、グランシェは「甘い!」と発して一喝した。

「人道もクソもないんだよ」

 俺の意見はグランシェに一蹴されてしまったのだ。

「日本やアメリカみたいな先進国では奴隷という言葉や文化は忌み嫌われる。まぁ実際あまり良い文化ではないがな。 しかし、一部の発展途上国は奴隷はれっきとした職業として存在する地域もあるし、今でも使用人と奴隷の差なんてそう区別されていないところもあるんだぞ?」

「それとこれとは話は別だろ。ここは俺達の世界じゃないんだ」

 と、俺も反論してみる。 が、グランシェは諦めない。

「その通り、ここは俺達の概念が通じないんだ。なら、奴隷の概念だって一方的に搾取される様な惨たらしいものばかりではないかも知れないだろ? しかもただでさえ俺たちは大きなハンデを背負っているんだ。使えるモノは使わんと、すぐに生きていられなくなるぞ?」

 それに。と、グランシェはまだ続ける。

「仮に俺達が奴隷を雇えば、それはその奴隷を救った事にもなるんじゃないか?」
「どういう意味だ?」

 グランシェは目を細めて言った。彼が目を細めるのは、それだけ真剣に語っている証拠だ。

「タイチ、お前は奴隷を手に入れたら酷い仕打ちをするのか?」
「いや、しないな」

「俺達が買わなきゃ他人に買われ、人道から外れた仕打ちをされていたかも知れない人間の人生を、そうしてタイチは救った事にならないか?」

「それはただの詭弁に過ぎないだろ」

 どうしても俺には彼が理解できなかった。
 やはりグランシェと俺ではこれまで生きてきた環境が違い過ぎるのか。この話題に関しては永遠に分かり合えない気がする。
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