第一幕その五
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思わない」
「そして他の者を悲しませてもか!?」
「私は勝つ運命、だからそのような心配は無用だと言っているだろう」
カラフは昂然と言い返した。
「だからお主は聞く耳は持っておらんのかと言っておるのじゃ」
「そうじゃ、人の話を何故聞こうとせん」
「それは決まっている」
カラフはまた言った。
「ほう、何がどう決まっているのじゃ!?答えてみよ」
宦官達は彼に対して問うた。
「私が姫を我が手に入れると決めたあらだ。そうとなれば最早他の者の言葉など何の意味もない」
「我が子よ・・・・・・」
ティムールは息子に対して言った。
「もういい加減にするがいい。御前に先立たれたならわしはこれから何を心の支えに生きておればよいのじゃ!?」
「父上、ですからそれは単なる杞憂に過ぎないと先程から」
「もういい、誰かこの男を取り押さえよ」
痺れを切らした宦官達が言った。先程まで銅鑼を持っていた兵士が頷き同僚達を呼びに向かった。
「そのようなことをしても無駄だ」
カラフは彼等を見据えて言った。
「無駄ではない、愚か者の目を覚ますことが出来るのだからな」
彼等は言い返した。
「お主は今夢を見ておる。今それを覚ましてやろう」
先程の兵士が戻ってきた。同僚達を連れている。
彼等はカラフの周りを囲んだ。そして取り押さえようとする。
「さあ、早くその棒を捨てるがいい」
宦官達はカラフに詰め寄った。
「否」
カラフはそれを拒絶した。
「ならば致し方ない。兵士達よ、この愚か者をひっとらえよ!」
「そう、そしてトラ箱で頭を冷やさせよ!」
兵士達がその言葉に頷きカラフに襲い掛かろうとする。だがカラフはそれより先に動いた。
「無駄だと言っておろう!」
そう言うと銅鑼を大きく振るった。
「トゥーーランドォーーーーーット!」
姫の名を叫んで銅鑼を叩いた。その音が夜の街に響いた。
「ああ・・・・・・」
それを見、銅鑼の音を聞いた一同は絶望の声をあげた。
「トゥーーランドォーーーーーット!」
もう一度叫んだ。そして銅鑼を叩く。
「遂にやりおったか・・・・・・」
宦官と兵士達をそれを見て絶望の奥底に落ちた顔で言った。
「自分から地獄に行こうとは・・・・・・」
「早速処刑の準備に取り掛かるとするか」
彼等は首を横に振ってその場を後にした。後にはカラフとティムール、そしてリューが残った。
「さあ、これで私は名乗りを挙げた」
彼は銅鑼を見て不敵に笑った。
「今の音は姫も聞いている筈」
そう言って再び宮城を見上げる。
「その心は私のものに」
「ああ・・・・・・」
ティムールとリューはその下に泣き崩れていた。だがカラフはそれに一瞥すらせずこれからの自身の勝利に想いを馳せていた。
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