37話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (1)」
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
聞くか聞かないかのとき、アシュレイはついに睡魔に屈した。
「ずっと思ってたんですけど、今まで【孤高】だったのに、どうして突然アッシュさんとパーティを組んだんですか?」
「ああ、それは……」
言い淀んだ。それを言うには自身の過去の詳細も言わなくてはならない。が、そうホイホイと喋るわけにもいかない。ひょっとしたらこの後、クオリがパーティを抜けて、誰かに話を――
(いや、しなさそうだわ。クオリだし)
ちらとクオリを見ると、突然押し黙ったユーゼリアを不思議そうに見ている。ユーゼリアは覚悟を決めて、話し始めた。
「実はね、私、とある者に追われているって言ったでしょう? あれには言ってないことがあるの……」
アシュレイに言ったのと同じように、自分の出生と、どういうわけで今アシュレイと共に旅をしているのか。簡潔な言葉で10分もかからない話だったが、ガタガタと振動が伝わる馬車の中は、静寂が訪れた。
ペパーミントカラーのクッションを胸に抱え、じっと動かないユーゼリアと、クリーム色のクッションをいじりながら何か考え事をするクオリ。御者台のアシュレイは寝ているしで、先ほどまでの和やかな空気はどこかに消え去った。
やがて、クオリが何か意を決したような面持ちで顔を上げた。
「……それが、全てなんですね」
「……そうよ」
「ありがとうございます。打ち明けてくださって。……わたしも、全てをお話します」
「……」
唾を呑んだ。自分の弱点ともいえるような秘密を言ったこともあるが、そんな他人の秘密を聞くこともまた緊張した。
「疑問に思いますよね。なぜ引きこもりのエルフが、里を出て流浪の旅をしているのか」
そしてクオリは過去を話し始めた。それは、ユーゼリアが思っていたよりずっと重いものだった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ