暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
37話「クオリ・メルポメネ・テルプシコラ (1)」
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聞くか聞かないかのとき、アシュレイはついに睡魔に屈した。




「ずっと思ってたんですけど、今まで【孤高】だったのに、どうして突然アッシュさんとパーティを組んだんですか?」

「ああ、それは……」

 言い淀んだ。それを言うには自身の過去の詳細も言わなくてはならない。が、そうホイホイと喋るわけにもいかない。ひょっとしたらこの後、クオリがパーティを抜けて、誰かに話を――

(いや、しなさそうだわ。クオリだし)

 ちらとクオリを見ると、突然押し黙ったユーゼリアを不思議そうに見ている。ユーゼリアは覚悟を決めて、話し始めた。

「実はね、私、とある者に追われているって言ったでしょう? あれには言ってないことがあるの……」


 アシュレイに言ったのと同じように、自分の出生と、どういうわけで今アシュレイと共に旅をしているのか。簡潔な言葉で10分もかからない話だったが、ガタガタと振動が伝わる馬車の中は、静寂が訪れた。

 ペパーミントカラーのクッションを胸に抱え、じっと動かないユーゼリアと、クリーム色のクッションをいじりながら何か考え事をするクオリ。御者台のアシュレイは寝ているしで、先ほどまでの和やかな空気はどこかに消え去った。
 やがて、クオリが何か意を決したような面持ちで顔を上げた。

「……それが、全てなんですね」

「……そうよ」

「ありがとうございます。打ち明けてくださって。……わたしも、全てをお話します」

「……」

 唾を呑んだ。自分の弱点ともいえるような秘密を言ったこともあるが、そんな他人の秘密を聞くこともまた緊張した。

「疑問に思いますよね。なぜ引きこもりのエルフが、里を出て流浪の旅をしているのか」

 そしてクオリは過去を話し始めた。それは、ユーゼリアが思っていたよりずっと重いものだった。


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