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シャンヴリルの黒猫
34話「スレイプニル (4)」
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、魔獣が遣い魔にそんなことをしようものなら、一瞬で首をはねられるだろう。だが、アシュレイはユーゼリアに、人に触れることで、良くも悪くも甘くなった。ユーゼリアのことを格下の魔獣に感謝など、普通しないものである。気づかぬうちに、アシュレイは偽りの優しさを、本物に変えることができたのだ。そして、それを本能的に悟ったスレイプニルの知性の高さにも、感嘆するばかりである。

「兎に角、俺が柵の中に入ったら、こいつが鼻面を押し付けてきたってわけだ」

「私には触れさせてすらくれなかったのに……」

 恨みがましい目で馬の頭を睨むユーゼリアだが、全く相手にされていなかった。

「まあそういうわけで…こいつ、俺らが貰い受けるって形でどうよ?」

「え!? 魔獣よ!?」

「だってもうペットみたいなもんだろう」

「でも……」

 渋るユーゼリアに、クオリが追い討ちをかけた。

「いいんじゃないでしょうか。どういうわけかは分かりませんが、スレイプニルがアッシュさんに懐いているのなら。魔獣は一度懐を見せた相手には決して襲いかかりませんし」

「うぅ…わかったわよ。2人が、そんなに言うのなら……」

 話がまとまりかけたところで、再び空気と化していた店主が割り込んできた。思わずアシュレイの機嫌も悪くなる。今まで美女美少女と話していたのに、いきなり生え際が後退したおっさんが会話に入ってきたのだから、まあ当然といえば当然かもしれない。

「お、おい! あんた、奴を殺すんじゃなかったのか!? 危ないんだろう!?」

「事情が変わったな。ま、もともとこの3人の中の誰かに懐いたら、こいつはタダで譲渡してもらう約束なんだから、あんたには問題ないだろう? 被害を被るのは俺たちなんだから」

「ぐっ」

 奥歯を噛み締め店主は引き下がった。

(やれやれ、諦めの悪い……)

 ふうっとため息をつくと、再び2人の方を向く。

「じゃ、そういうわけで、いいかな。とりあえず馬車と同時に馬もゲットした、ということで」

「もっちろん! これでお金が浮いたわ! ただでさえ6人乗りを買って、ちょっと心もとなかったのよね」

「じゃあ、この先行われるという武闘大会に出ませんか? 賭けが公式にあるそうですよ。勝てば一攫千金も夢じゃありません」

「それはいいわね!」

「期日に間に合えば、選手として登録もできるかもしれません。もし優勝できたら賞金がもらえますよ」

 最後はこちらに顔を向けて、にやりと笑った。「貴方なら勝てるでしょう?」といっている顔だ。そこまで言われれば勝ってやろうじゃないか、という気になる。

「まずは、馬車ね。おじさん、あの馬車買うわ! 150万でいいのよね!」

「……くそッ。もってけ泥棒!
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