第一幕その四
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「・・・・・・・・・」
宦官達は沈黙した。そして再び口を開いた。
「いい加減に人の話を聞かぬか!」
最早完全に激昂していた。
「そうして自分の命を粗末にするなと何度言えばわかるのじゃ!」
彼等は口々にカラフに対して怒鳴りつける。
「そなたには親もいるのだろう、そうして死に急ぐなと言っておるのだ!」
だがカラフはそんな彼等に対しても心を動かされない。
「こちらも何回も言っているだろう、そんな心配は一切不要だと」
「貴様は人の話が理解出来んのか!」
三人は一斉に怒鳴った。そこに宮廷の侍女達が現われた。
「もし」
彼女達は宦官達に対して言葉をかけた。
「ムッ、何じゃ?」
彼等はそちらに顔を向けた。
「姫様はもうお休みですので。あまり叫ばれると」
侍女達は彼等を嗜めに来たのだ。
「おお、そうであった」
彼等は姿勢を正して宮城の方を見た。刑場のすぐ側にもその豪壮な城はあった。
「いかんいかん、危うく我等の首が飛ぶところであった」
彼等は気を鎮めながら言った。
「まだ死にたくはないからの」
「はい、お気をつけあそばせ」
そう言うと侍女達は去っていった。後には再びカラフ達と宦官達が残された。
「成程、あの城に姫がいるのか」
カラフは宮城を見上げて言った。
「そうじゃ、それもすぐそこに姫のお部屋がある」
宦官達は宮城の一部を指差して言った。
「そなたも感じるじゃろう、あの氷の様な冷たさを」
彼等は小声で言った。
「のう、もうわかったじゃろう。姫様は半ばこの世の方ではない」
「そう、仙界に住む神のような不思議な方なのじゃ」
彼等は小声でカラフに対して言った。
「人は女神とは結ばれぬ」
「ただその美しさを遠くから見るだけなのじゃ」
「だから、の・・・・・・」
そして彼等は一息置いてこう言った。
「大人しく諦めるがいい」
しかしカラフはそれでも首を縦には振らなかった。
「そうか、女神か。それはいい」
不敵に笑って上を見上げた。
「益々私に相応しい女だ。是非ともこの手にしなくてはな」
「まだ言うか・・・・・・」
彼等は呆れ果てた声で言った。
「そうだ、姫に求婚することの宣言にはあれを使うのだったな」
カラフはそう言うとその場を足早に立ち去った。
「あっ、お待ち下さい!」
リューとティムールがそれを追う。
「ええい、待つのじゃ!」
宦官達も追う。カラフはそれに構わず刑場の端へ向かった。
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