第四話〜副官〜
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「初めまして。姓は朱、名は才、字は君業………そうですね、この際真名も預けましょうか。江と呼んでください」
「「!」」
江の自己紹介に二人は驚きの表情を浮かべる。
その驚きはきわめて妥当である。何せ江と2人は初対面、そして江から見て2人は下の身分となるのだ。にもかかわらず、一目見ただけで真名を許したのだ。
そのことの異常性は誰にでも理解できるものだろう。
「あら、もう真名を許しちゃうの?」
江の横に立っていた焔が問いかける。
その表情には驚きは微塵もなく、むしろ笑みを浮かべている。それは祭にも言えることだが…
「ええ、母様たちの紹介する人たちですからね。それに眼を見ればある程度人となりはわかります」
「まったく………簡単に言ってくれるの。それがどれだけ難しいことかはおぬしも知っているじゃろう」
江の飾りのない言葉に祭は呆れ交じりの苦笑をもらす。そこへ、3人の会話に乱入者が現れた。
「………あなた、無用心すぎる」
スチャ
短い無機質な音が室内に響く。
「…これはどういったおつもりですか?」
未だに笑顔のまま諸葛瑾に話しかける江。
しかし先ほどまでとは違い、その首筋には不気味に光を反射する白刃が突きつけられている。
そしてそれを見守る祭や焔の表情にも変わりはない。
「………あなたは自分の立場を理解していない。既にこの呉において確固たる地位を築き、更に多くの国事に携わっている」
「ええ、それが何か?」
「それなのにもかかわらず、隙を見せ過ぎ…あなたはいつ命を狙われてもおかしくない立場」
「確かに命は狙われてもおかしくないですね」
でも
江は言葉を切ると、変わらない表情の中に有無を言わさない強い圧力を加えて、再び口を開く。
「それならば何故私は今生きているのでしょうか?賊上がりであり、他の方々から忌み嫌われてもおかしくない私が」
「………それはあなたの母親が焔様だから」
「…ふむ、ではもう少し詳しく言いましょうか」
何故今まで何度も暗殺されかかっているのに、今こうして生きているのでしょうか?
ピシッ
「………え?」
突然、諸葛瑾の握っていた短刀が音を立てて崩れた。
そして目の前の男は、諸葛瑾にとって予想外のことを言ってのけた。
二つの想定外に直面した諸葛瑾はその能面のような顔にわずかながらの驚愕を浮かび上がらせる
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