第四話〜副官〜
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は思春を気に入っているようで、思春は思春で蓮華に仕えることも満更ではないようだから、別段気にすることでもないのかも知れない。
しかし、それでも自分が懸命に努力して副官になろうとしているのに、その座をぽっと出の誰とも知れない輩に奪われるのは面白くないはず。
そう考えると自らの負担になろうとも、この提案を受け入れるわけにはいかなかった。
余談だが、このやり取りを見ていた思春は何やら惚けた顔で、「江様…」と普段からは想像出来ないほど女の子した声で呟いていた。
「はぁ………ねぇ、江?あなたは勘違いしてるわ。思春には文官としての補佐が出来ないでしょ?だからそこをやってもらうのよ」
「それでも…」
といいかけたところで、横から入った言葉に口を閉ざす。
声の主は意外にも思春だった。
「江様、お気遣い感謝いたします。しかし政務の量が膨大なのもまた事実。私のわがままでこれ以上江様の負担を増やすわけには参りません」
「思春…」
思春の言葉に、江は言葉を詰まらせる。
事の次第を見守った焔は、今一度江に言葉を投げかけた。
「それにあなたに副官をつけるのは決定事項よ。大人しくお受けなさい」
「…はい、母様」
思春の気遣いを無下にしたり、決定に逆らうという選択肢を持ち合わせていない江は大人しく従うこととなった。
江の承諾の意を聞き、祭も焔も満足そうにうなずく。
そして祭は江に尋ねた。
「ところで、お主が副官に求めるものは何だ?」
「呉への絶対的な忠誠、そして国事を担えるだけの能力、それだけ揃えば構いません」
そして江は即答で返す。
ちなみに『それだけ』と言っているが、一般的常識から見れば、この条件を満たす者は『逸材』である。
この辺りにも、江が自分に、そして他人に求めるモノが大きいことが表れている。
「…ならば性格や性癖の面では問題あってもいいのね?」
「?…別にかまいませんが?」
「そう、じゃあすぐ紹介しましょうか。ついてきなさい」
焔の言葉の中に不穏なものが含まれているような気がしたが、江は特にそれを気にかけることなく返事をし、そしてそのまままだ見ぬ副官の元へと向かうことになった。
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「姓は陸、名は遜、字は伯言です〜」
「………諸葛瑾 子瑜」
通された部屋の中にいたのは翡翠色の髪をした少女と、黒い髪が目にまで達している小さめの少女が立っていた。
確かに後者の方は若干内向的には思えるが、別に問題するほどのことでもないように見受けられる。
それだけに先ほどの焔の言葉が江の思考の片隅に引っかかる。
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