第一幕その三
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第一幕その三
「頼むから今回は恩赦を!」
その声はやがて刑場に満ちていった。
「助けてやれ、助けてやれ!」
だがそれはたった一人の声で打ち消された。
「黙りなさい!」
冷たく高い女の声だった。澄んではいるがその響きは何処か人のものではなかった。
「姫・・・・・・」
皆その声がした方を振り向いた。そこは刑場を一瞥する高座であった。そこに一人の女が立っていた。
その女は豪奢な金と銀に輝く丈の長い服を着ていた。頭には美しく装飾された冠を着けている。その美貌はこの世のものとは思えぬ程であった。肌は白く雪のようである。鼻は高く口は小さい。そして切れ長の黒い瞳はまるで鳳凰のそれのようであった。その全身からは神々しいまでの気が発されていた。
黒い髪は後ろに下ろされている。床にまで達さんとするそれはまるで絹のようであった。
「あれが姫か・・・・・・」
カラフはその眩いまでの姿を見て思わず息を飲んだ。
「噂は真だった。まさかこれ程までの美しさだとは・・・・・・」
彼は姫から片時も目を離すことが出来なくなっていた。
「我が夫となる者には謎を出す。そして答えられぬ場合には死を与える」
彼女は民衆を見下ろして言った。
「それは法で定められた通り。逆らうことは許しません」
彼女は刑場全体に響くその冷たい声で言った。皆その声に沈黙してしまった。
「はじめなさい」
彼は首切り役人に対して言った。役人はそれを聞くと彼女に対して一礼した。
銅鑼が再び鳴った。王子が処刑台の上に来た。
「いよいよか」
民衆はそれを見て絶望した気持ちになった。王子は跪き首を差し出した。
刀が振り下ろされた。王子の首は血飛沫と共に飛んだ。
「終わった・・・・・・」
皆それを見て落胆して言った。首は床に落ち役人に拾われた。
それを見届けた姫はその場から立ち去った。民衆も一人また一人とその場を後にした。
「終わりましたね・・・・・・」
リューは蒼ざめた顔で言った。
「姫様は何故あのようなことを・・・・・・」
彼女の顔は哀しみに満ちていた。
「全くじゃ。謎が答えられぬことが罪だというのか」
ティムールもその顔を暗くさせていた。
「・・・・・・・・・」
その二人に対してカラフは沈黙していた。ただ姫がいたその場所を見つめていた。
「トゥーランドット・・・・・・」
彼はふと呟いた。
「それは何のことですか?」
リューが尋ねた。
「あの姫の名だ」
カラフは答えた。
「トゥーランドット・・・・・・不思議な名ですね」
「うむ。この世の者の名ではないようじゃ」
ティムールもそれを聞いて言った。
「父上、リュー」
彼は二人に顔を向けて言った。
「殿下、どうなさいました?」
リューが
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