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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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来るならあなたにスグを守ってほしいわ」
「へ? どうして」
「スグは、私にとって大切な人のうちの一人よ。そう思うのは当然だわ」
「そ、そうじゃなくて。……どうして僕なの?」
 本当に分からないようで、伸一が間の抜けた顔で私の目を見詰め返してくる。私は小さく息を吸った。
「……私が今心から信頼しているのは、幸歌と、スグと、……伸一だけだもの」
「ええっ!?」
「どうして驚くのかしら。当たり前じゃない」
 伸一が唖然とした表情で、口をパクパクと開閉させている。思わずクスクスと笑うと、彼はフリーズから立ち直ったのか、頬を赤くさせたまま頭をガシガシと掻き、
「紅葉ちゃんってさ、よくそういう恥ずかしいこと言うよね……」
「どうして恥ずかしいのよ。本当のことじゃない。嘘は言っていないわ」
「分かってるよ! ……だから、余計恥ずかし――――ああ、もういいや」
「何よ、はっきりしないわね」
 口元を手で押さえてそっぽを向く伸一に呆れ、眉をひそめる。だが、同時に違う可能性が頭の中に浮かんだ。
「それとも、あなたにとって私のこの気持ちは重いのかしら」
 刹那、伸一が顔を上げる。ギョッとしたような顔だった。彼は私が口を挟む間もなく早口で、
「そんなことない! 嬉しいよ。……僕も、紅葉ちゃんは大切な友達だって思ってるんだから!」
「……そう。ありがとう、私も嬉しいわ」
 ――――人間とは残酷で、嘘をつく生き物だ。どんなに正しさを貫く人物でも、自己中心的になる時はある。聖人のような人などごく一部だ。すなわち、『清く正しく、どんな人に対しても差別せずに優しく』などほぼ不可能だと言ってもいい。
 しかしそれでも、目の前にいる彼は、少なくとも私にとっては“優しい人”だ。
 確かに教室に通っていた頃と比べれば、伸一とは少し疎遠になっただろう。けれどもこうして会えば対等に接してくれるし、私も躊躇いなくそう出来る。
 “普通”に話してくれる数少ない友人だ。
「……そうだ、伸一。これから幸歌と会う約束をしているのだけれど、あなたも来る? きっと幸歌も喜ぶわ」
「う、うーん……」
「この後何か予定でもあるのかしら」
「そ、そういうわけじゃないんだけど……」
「それだったらいいじゃない。もう少し伸一と話したいわ」
 思案する表情になる伸一を見詰める。彼は目を泳がせたが、やがてコクンと一つ頷いた。
「じゃ、じゃあ……」
「決まりね。さ、行きましょ?」
 伸一が私の横に並んだのを確認して、ハンドリムを操作し始める。はじめ彼は歩幅を小さくし歩行スピードを緩めようとしてくれたみたいだが、車椅子の操作に慣れた今となっては一般的な人が歩く速度とそう変わらない。彼の優しさに感謝しつつ、私たちは進む。
「そういえば、伸一。この前駅でバレエ教室の先生にお会い
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