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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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恐れ入りますが、そこを通して頂けませんか?」
「あ、ああ、ごめん。……ごめんなさい。あの、手伝おうか?」
「いいえ、結構です。慣れていますので」
 彼の体が脇へ逸れたのを確認して、車椅子の操作を再開した。だが和人とすれ違った瞬間、声が掛けられる。
「いつものとこに行くのか?」
「あなたには関係のないことだわ。……いつも言っているでしょう。私に関わらないでいいですから」
 私は嫌悪に顔を潜めながら、冷たい声で素っ気なく言い放つ。
 痛いほどの静寂が包んだ。
 この空気を作っているのは私だと、十分理解している。けれど破ろうとは思わない。
 背後にいる和人の様子はもうわからない。……といっても、彼はいつものように目を逸らして、顔を俯けているだろうから、分かるはずもないのだが。
 怒りか、悲しみか、はたまたそれ以外の感情か。
 私には、もう確認する術はない。
 だがどんな感情を抱いているとしても、もう関係ないのだ。
 私は追い打ちをかけるべく、必ず傷つくと分かっている言葉を投下する。どんな事よりも、苦しいものと知っているから。

「本当の兄じゃないくせに」

 これ以上の会話は時間の“無駄”だ。 
 さらに反応が返ってくる前に手早くハンドリムを操作した。玄関付近で車椅子の車輪に付けたカバーを外す。そして感情が出ないように玄関のドアを開け、そっと、けれど後ろは振りかえずに閉めた。
 私の後を追いかけてくるものは、当然のことながら誰一人としていなかった。
 ――――しかし、門を出たところで待ち構えている者はいた。
「あら……、伸一じゃない」
 全く予想していなかった人物に、私は目を丸くする。それは向こうも同じだったようで、人の家の前で何やら難しい顔をしていたくせに、ビクリと小動物のように跳ね上がる。
「も、紅葉ちゃん」
「そんな、まるで幽霊でも見たみたいな反応をしないでちょうだい」
「ご、ごめん」
 しゅんと肩を落とす彼に、私は表情を柔らかくした。尖っていた感情が、雪解けのように穏やかになっていく。
「まあ、いいわ。……それで、ウチに何の用かしら。あいにくだけど、スグは部活に行ったわよ」
「そ……っ、そんなんじゃないよ!!」
 顔を真っ赤にさせて間髪入れずに言い返してくる伸一に、私は苦笑いを作った。
「あなた、まだスグと話せていないのね」
「う、うぐっ……」
 声を詰まらせたかと思うと、彼は明後日の方向を見て、
「……いいんだよ、見ているだけで」
「同じようなことを、もう何年も言っているわよ?」
「うう……」
 ついからかってやると、拗ねたように口を尖らせる。彼は気づいていないが、私や幸歌以外にはこんな表情はしない。微笑ましくなり、私は笑みを浮かべる。
「伸一のことを信頼しているから言うけれど、出
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