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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第2話 歓喜する魂
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 私の顔を見て笑った幸歌だったが、背後に立つ伸一を見て動きを止めた。ボンッと小さい爆発が幸歌の顔で起きる。顔をゆでダコのように真っ赤にさせ、ガバッと勢いよく立ち上がった。
「な、なななななな、何で長田君が……っ」
「あら、駄目だったかしら。来る途中で会ったから、せっかくなら3人で、って思ったのだけれど」
「ううん、別に駄目じゃなくて……、むしろ……う、うれし……」
「幸歌?」
「何でもない!」
 ブンブンと顔を横に振ったかと思うと、両手で顔を覆ってトスンと再びベンチに沈んだ。本当に幸歌は可愛い。
 一方、その様子を伸一はきょとんとした表情で見ていて、何も分かっていないご様子だ。さすがに呆れてくる。私は眉を吊り上げながら、肘で彼の脇腹を小突いた。
「なっ、何、紅葉ちゃん」
「別に何でもないわ」
 私は大きなため息をつき、幸歌の細い肩に手を置いた。
「幸歌、驚かせてごめんなさい」
「ううん、ありがと……」
 手を退けた彼女は、ふにゃりと笑う。桃色に染まった頬が愛らしい。
 あいかわらず彼女の笑顔は朗らかで優しかった。柔らかな声が、耳によく馴染む。
 彼女も今までと変わらない視線を向けてくれる一人だと、そう素直に思える。
「ごめんね。大変だったでしょ」
「いいえ、大丈夫よ。そもそも、今日も外へ出るつもりだったから」
「そう? ……あ、長田君も、ええと、ありがと」
「い、いや……」
 チラリと視線を向けられた伸一が、ぎこちなく言葉を返す。幸歌もあちこち目をやり落ち着かない様子だ。だが、ベンチの横に置かれた紙袋を見た時、「あっ」と短く声を上げる。
「そうそう! 今のうちに渡しておかなきゃ」
 きっとどこかの雑貨屋でラッピング用のものを購入してきたのだろう。パステルブルーのチェック柄が可愛らしく、幸歌らしい。
 彼女は高らかに手を打つと、宝物を手にするかのような手つきでその紙袋のヒモを掴む。そして私に向かって差し出し、
「はいこれ、お祝い!」
 いきなりのことで私は面食らった。咄嗟に言葉が思いつかない。
「……え、お祝いって、まさか」
「そうそう、そのまさかだよ。直接渡したかったから、半年以上遅れちゃったけどね〜」
「……合格? ……って、何? 紅葉ちゃん、何か資格でも取ったの?」
 すると、ただ一人状況を飲み込めていない伸一が首を傾げて問うてくる。幸歌は目を丸くすると、私の顔を凝視して、
「紅葉、長田君に話してないの!?」
「ええ。……だって、わざわざ言うようなことでもないでしょう?」
「そういう問題じゃないよ〜……」
 呆れたような声を出すと、ガックリと幸歌が肩を落として脱力した。私はどうしてそんな反応をされるのかよく分からず首を傾げる。
「な、何なんだよ。早く説明してよ」
 我慢の限界になった
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