第一幕その二
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「他ならぬそなたの頼みだ。私には異存は無いが」
そう言うと父のほうに顔を向けた。
「父上はよろしいでしょうか?」
そして父に尋ねた。
「わしは構わんぞ」
ティムールはしわがれた声で言った。
「そなた等がそれを願うのならな。そなた達の好きにするがいい」
「わかりました」
二人はそれを聞くと彼に頭を垂れた。
「では行くとしよう」
「はい」
こうして三人は処刑場に向かった。
処刑場には多くの人々が集まっていた。台の上には首切り役人が大きな刀を持って用意していた。
「おい、まだか」
民衆の一人が言った。
「まだだ、月は出ていないぞ」
処刑場の中に警護を務める兵士の一人が言った。
「そうか、そういえばお役人はまだ刀を磨いているな」
みれば首切り役人はその刀を念入りに磨いている。
「しかしあの人も忙しいよな」
民衆の中の誰かが言った。
「ああ、あの刀が乾く日はないんじゃないか」
別の者が言った。
「本人はあまり乗り気じゃないみたいだけれどな」
見ればその表情が暗い。
「そりゃそうさ。誰だってあんな仕事はしたくはない」
そうであった。首切り役人の気は晴れなかった。
「またこうして罪も無い者の首を切るのか」
役人は磨き終えた刀を見てそう呟いた。
「一体こうしたことが何時まで続くんだ」
暗澹たる気持ちだった。だがそれを顔に出すわけにはいかない。
「そろそろ月が出る頃だな」
彼は暗くなった空を見てそう言った。
「銅鑼が鳴れば全ては終わりだ」
見れば刑場の端にある銅鑼の前で銅鑼を叩く兵士も空を見ている。彼もまたその表情は暗い。
「そろそろだぞ」
民衆達も空を見ている。そして言った。
「出るぞ」
城門の上に明るいものが姿を現わしてきた。皆その顔が暗くなる。
「出たぞ・・・・・・」
遂に月が姿を現わした。首切り役人も銅鑼の前の兵士も暗い表情で配置についた。
銅鑼が鳴った。蒼白い月の下その音が刑場に響き渡った。
「来たぞ」
馬に乗った将校を先頭に兵士達の一団がやって来る。それぞれ手に槍や剣を持っている。
その中央に両手を後ろで縛られた若者がいる。浅黒い彫の深い顔をしている。服はペルシャの貴人の服だ。彼は蒼ざめた顔で前を歩いていく。
「まだお若いというのに」
民衆は彼の姿を見て気の毒そうに言った。
「ああ、だが謎を解くことが出来なかったからな」
彼に聞こえないように小声で言う。だがそれはおそらく耳に入っている。
「はじまるのですね」
刑場の中でも特に見通しのいい場所にいたリューは隣にいるカラフに対して言った。
「うむ、あの若者の命がこの血生臭い場所の露となる」
カラフは唇を噛み締めて言った。
「お情はないのですか!?」
リュ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ