第八話
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なよ! お前……いつもそうやって後悔してたろ!? どうせまた後悔するだけだって!」
「死んじゃったら……後悔することも…ない…でしょ?」
「そうかもしれないけど!」
「だったら……今のうちに……死なせてよ? そうじゃなきゃ……もう……覚悟できなく…なるし……それに……言ったでしょ……?」
「言ったって……何を……?」
そう問い返した俊司をみて、由莉香は軽い笑みを浮かべていた。
「あの物語……好き……なんだって……」
そう言われて、俊司は言葉を失っていた。
由莉香が言った物語は、俊司の記憶にも深く刻まれていた。自分の正義を貫いて死んでしまう主人公の物語を。
「お前……」
俊司はやっと、由莉香の言う覚悟の意味を知った。
由莉香はただ単に死ぬことを望んだのではなく、自分なりの正義を貫いて死ぬことを覚悟していたのだ。覚悟ができなくなるというのは、いずれ軍と戦うことになった時、一度決めた覚悟が崩れるかもしれないと恐れていたからだろう。そうなってしまうなら、ここで死ぬほうがいい。それが彼女なりの考えだった。
「お願い……俊司君……」
「……」
俊司は何も言い返すことができなかった。
彼女に死んでほしくはない。だが、彼女の覚悟を知ったからか、その気持ちを尊重したい自分もいた。
心臓の鼓動が早くなっていく。自分が今決断すべきときにいるからか、冷や汗がとまることなく噴出していた。
そして、俊司は考え抜いた後、自分の思いを踏みにじる決意をしていた。
「ほんとに……それでいいのか……?」
「……うん」
「……わかった」
俊司は泣きながらも、彼女に笑みを返した。
これ以上つらい思いをさせないほうがいいし、望んでいるようにしてあげたほうがいい。それが彼の考えた結果だった。
「俊司君……」
「すいません咲夜さん……」
「あやまることないわ……しかたないのね……?」
「はい……」
咲夜は返答を聞くと、軽くうつむいていた。その後ろでは早苗や橙が泣いている。藍は泣いてはいなかったが、必死にこらえているようだった。
「ごめんね……」
「もう謝るな……もういいから……」
「そっか……あの……ね……しゅん…じく……ん……?」
「ああ……なんだよ……?」
そう問いかける俊司。
だが、何秒たっても彼女は口を開こうとはしなかった。
「……由莉香?」
不思議に思い再度問いかける俊司。だが、彼女は何もしゃべろうとはし
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