第35話 誰が為に戦う(1)
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らっていいんですよ?」
リリーの事を覗き込むような体勢で、ファリンがそう確認した。家の中で何ともおかしなことだが、純吾は月村家が常備している救急箱以外にも、自分でもう一つ用意しているのだ。
「さぁ、それはジュンゴに言ってちょうだい。私はそうお願いされたから、言われたとおりにするだけなんだし」
肩をすくませて、リリーが答える。そして「ほら行った行った」と手をひらひらとさせて、ファリンにキッチンへ行くように促す。
「はいはい、分かりました。じゃあ、皆さんのことよろしくお願いしますね〜」
「そっちこそ、料理の下準備失敗するんじゃないわよ」
キッチンへと向かうファリンにそう冷やかしを言った後、リリーは階段を上る。長い黒髪がこつこつと、階段に響く足音と共に揺れた。
「そう、本当に大したものだわ…」
誰もいない2階の廊下を歩きながら、リリーはそう一人ごちる。そこに先ほどまでのひょうひょうとした表情はなかった。能面のように、今のリリーの顔から感情をうかがう事はできない。
「さっき言った機能にプラスして、悪魔のいないこの世界に対応する調整。
戦うだけで、それに見合った空気中からのマグネタイトの吸収に、仲魔からのスキルクラック。それにマッカの定期的な振り込み……
ほんっと、これを作った奴はジュンゴに何をさせたいってんでしょうね」
純吾の部屋のドアを開け、若干荒い手つきでクローゼットの中を探るリリー。若干部屋の中を乱雑にしながらも、お目当ての救急箱をとりだした。
「けど、それでも――」
そしてきゅっと、救急箱を胸に抱きしめるように抱え、部屋を出る。
顔には柔らかな笑みを、しかし目には苛烈とも言える意思の光が灯っていた。
その意思は抵抗。今もどこかで、必死に生きる自分達の事を見ている輩に対しての、命の限りの抵抗を貫かんとするものだ。
「それでも、もうジュンゴに悲しい思いをさせたりしない。力で道を切り開けというのなら、その思惑にのってやるわ。
もらった力、遠慮なく振るわせてもらうわよ」
誰に言うでもなく、虚空に向かってそう独りごちる。それからリリーは、赤く染まった廊下を裏庭へ向けて歩き始めるのだった。
次の日の夜
その日はアリサとすずかが習い事の日であり、夜の巡回をなのは、ユーノ、純吾、そしてリリーの4人で行っていた。
余談だが、習い事についてこんな事しいてる余裕があるのか、と彼女達自身が辞めようとした事がある。だが、純吾達がそれを思いとどまらせた。二人とも「今だからこそ、“日常”を大切にしてほしい」と言われると、ぐぅの音もでなかったのだ。
「しっかし、そう簡単には見つからならないものねぇ」
リリーが
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