黄巾の章
第5話 「……あたしは弱いのか」
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はどこだ? 洛陽に向かっていたんじゃないのか!?」
「違います、恐らく反対方向かと……」
「なにい!?」
周囲を見渡してもまったく覚えのない光景ばかり。
母さんに言われて朝廷に拝謁して、黄巾討伐を言い渡されて……
挙句の果てに負けました、敗走していますときた。
「……あたしは弱いのか」
錦だの姫だのと言われ、体調の優れない母さんに家督を譲られて出兵してみれば、華雄が突撃して陣列が乱れ、張遼とまとめようとするも、まとめきれずに敗走……
「情けない……」
思わず涙が出る。
こんな、こんなところであたしは終わるのか……
「馬超様! 黄巾が迫っております! 早くお逃げを!」
兵の一人が叫びながら槍を構える。
すでに傍にいる兵は十にも満たない。
「いや……こんなところでお前達を見捨てるぐらいなら、あたしはここで死ぬ」
「なにをおっしゃいます! 馬騰様が姫のお帰りを待っておいでなのですよ!」
「あたしに仲間を捨てて一人で逃げ帰れと!? 帰っても母さんに殺されるわ! ならばお前達と共に泰山府君の元にいく!」
「馬超様……」
こうなったらあたしも意地だ。
こいつらと共にここで死んでやる。
(母さん、ごめん。弱いあたしを許して。蒲公英、あんたに西涼はまかせたかんな……あたしよりいい盟主になってくれよ)
そう心で念じて槍を持ち、馬を翻す。
「この錦馬超! これより逃げも隠れもしない! 一人でも道連れにして冥府へ参る! 賊ども、この首獲れるものなら獲ってみよ!」
あたしはそう叫んで馬で突撃する。
賊はこちらを斬り裂こうとするが、あたしの愛馬がそれを巧みに避ける。
「そんな引いた腰の剣であたしの首を獲れると思うな!」
目に付く端から槍にて突き刺し、薙ぎ、首を刈る。
そうして三十にも打ち倒した頃だろうか。
飛来した矢に驚いた愛馬が嘶き、体勢を崩したあたしが地に落ちる。
「ぐっ!」
「いまだ、あの女を殺せ!」
黄巾があたしめがけて殺到する。
ここまでか……
あたしは諦め、眼を閉じた。
「死ねぇ!」
賊の剣があたしの胸を貫いた。
……はずだった。
「な、剣が!?」
バキッとした音と共に、折れた剣先が飛ぶ。
「まにあったか……」
思わず瞑った眼を開ける。
あたしの目の前に、黒い服の大きな背中が見えた。
(! とう、さん……?)
その背中が幼い頃に背負われた、屈強な父の背中のように見えて涙があふれる。
「大の男が寄って集って一人の女を襲う……恥知らずどもめ!」
違う。
父は死んだ。もういない。
じゃあ、この背中
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