暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第5話 「……あたしは弱いのか」
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はどこだ? 洛陽に向かっていたんじゃないのか!?」
「違います、恐らく反対方向かと……」
「なにい!?」

 周囲を見渡してもまったく覚えのない光景ばかり。
 母さんに言われて朝廷に拝謁して、黄巾討伐を言い渡されて……
 挙句の果てに負けました、敗走していますときた。

「……あたしは弱いのか」

 錦だの姫だのと言われ、体調の優れない母さんに家督を譲られて出兵してみれば、華雄が突撃して陣列が乱れ、張遼とまとめようとするも、まとめきれずに敗走……

「情けない……」

 思わず涙が出る。
 こんな、こんなところであたしは終わるのか……

「馬超様! 黄巾が迫っております! 早くお逃げを!」

 兵の一人が叫びながら槍を構える。
 すでに傍にいる兵は十にも満たない。

「いや……こんなところでお前達を見捨てるぐらいなら、あたしはここで死ぬ」
「なにをおっしゃいます! 馬騰様が姫のお帰りを待っておいでなのですよ!」
「あたしに仲間を捨てて一人で逃げ帰れと!? 帰っても母さんに殺されるわ! ならばお前達と共に泰山府君の元にいく!」
「馬超様……」

 こうなったらあたしも意地だ。
 こいつらと共にここで死んでやる。

(母さん、ごめん。弱いあたしを許して。蒲公英(たんぽぽ)、あんたに西涼はまかせたかんな……あたしよりいい盟主になってくれよ)

 そう心で念じて槍を持ち、馬を翻す。

「この錦馬超! これより逃げも隠れもしない! 一人でも道連れにして冥府へ参る! 賊ども、この首獲れるものなら獲ってみよ!」

 あたしはそう叫んで馬で突撃する。
 賊はこちらを斬り裂こうとするが、あたしの愛馬がそれを巧みに避ける。

「そんな引いた腰の剣であたしの首を獲れると思うな!」

 目に付く端から槍にて突き刺し、薙ぎ、首を刈る。
 そうして三十にも打ち倒した頃だろうか。
 飛来した矢に驚いた愛馬が嘶き、体勢を崩したあたしが地に落ちる。

「ぐっ!」
「いまだ、あの女を殺せ!」

 黄巾があたしめがけて殺到する。
 ここまでか……
 あたしは諦め、眼を閉じた。

「死ねぇ!」

 賊の剣があたしの胸を貫いた。




 ……はずだった。

「な、剣が!?」

 バキッとした音と共に、折れた剣先が飛ぶ。

「まにあったか……」

 思わず瞑った眼を開ける。
 あたしの目の前に、黒い服の大きな背中が見えた。

(! とう、さん……?)

 その背中が幼い頃に背負われた、屈強な父の背中のように見えて涙があふれる。

「大の男が寄って集って一人の女を襲う……恥知らずどもめ!」

 違う。
 父は死んだ。もういない。
 じゃあ、この背中
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ