黄巾の章
第5話 「……あたしは弱いのか」
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護るために自分から率先して調練をしてくれとまで言うようになった。
やはり、同じ釜の飯を食うことは連帯感を生ませるな。
兵と共に同じ飯を食べる俺を見て、愛紗たちもそれに混ざるようになっていた。
また、新たに参加した義勇兵たちも先達である義勇兵が率先して面倒を見ているらしい。
なんでも新兵をまず同じ釜の飯を喰わせて「一緒に食べて寝て戦う、それが天の御使い様の人となりだ」と言い触らしているらしい。
さすがに恥ずかしいからやめてと言おうと思ったら、実は朱里の策だったらしい。
人心掌握に主を辱めてなにが楽しいのだ、幼女よ。
「よ、幼女ではありましぇん!」
はっはっは。
恥ずかしさのお返しだ。
まあ、それがうまくいっているのは認めざるを得ない。
なにしろ、新兵が涙を流しながら飯を喰うからだ。
その間にいかに俺が兵を大事にするか、劉備という人がどんなに愛らしい方か、関羽が雄雄しくたくましいか、張飛が元気でかわいいか――
「わ、私は雄雄しいのですか……そうですか……グスン」
いあいあいあ。
愛紗は可愛いし立派だし、髪も綺麗だしその細腕と立ち姿はまるで天女のようで……ごほん。
と、ともかく。
そうして軍に来た新兵の士気を高め、俺たち指揮官への信頼を高める。
朱里の策はさすが孔明、といったところだろう。
そうして今では兵の数は一万までに及び、糧食も心配せず戦うことができている。
曹操の協力を断ったので糧食と資材が心配だったが、あの陣のものを本当に何も持っていかなかったらしい。
さすが曹操……覇王だのなんだのという逸話が残っているだけはある。
だが……俺は、覇王を認めたくはない。
覇王とは……悲しみの道でしかないからだ。
覇王は、武と恐怖で人民を纏めようとするもの。
日本でいうと織田信長がもっとも有名だろうか。
あるいは……政治家から転身した後のナチスのヒットラー?
中国では……これより昔だと項羽がいたか。
そのどれもが、最後は悲しい結末に終わる。
覇王とは徳によらず武力・策略で諸侯を従えて天下を治める人。
それゆえ恨みの念が付きまとい、裏切りが必ず起こる。
覇王は、劇薬なのだ。
短期的に世の中を一変させる力はあるが、それはほとんどの人を救わない。
常に悲しい結果と災厄に見舞われる。
孟子のいう「王覇の弁」は俺でも知っている。
そして歴史が……俺が知る歴史がそれを証明した。
だから、それを進んで行う曹操には……従えない。
(もしも最初に会ったのが桃香ではなく曹操だったら……)
曹操に会った後、何度か考えただろう想像。
たぶん、彼女を止めただろうな。
それは自分も他人も救わない、一
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