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トゥーランドット
第三幕その六
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しはじめた。皆次の言葉が発せられるのを絶望した顔で聞いていた。
 だがカラフだけは別だった。自信に満ちた顔で姫を見上げていた。
「我が愛!さあ愛よ、我がもとへ!」
 彼女は右手をカラフに向けて言った。今までになく力強く明るい声であった。
 カラフは階段を駆け登って行った。そしてトゥーランドットを激しく抱き締める。
 トゥーランドットも彼を強く抱き締めた。それを見た民衆は叫び声をあげた。
「姫様の心が遂に温もりを覚えられた!」
 そして誰かが花を撒いた。
「祝え、祝おう。姫様が愛をお知りになったこの時を!」
 彼等もまたトゥーランドットを愛していたのだ。彼等にとって彼女は美しいだけでなく公平で優れた君主であったからだ。
「愛こそこの世を永遠に輝かせる光だ、この世を照らす光を皆で称えるのだ!」
 皇帝は玉座から立ち上がり叫んだ。そして役人達がそれに続く。
「皆でこの光を称えよ、愛よ、永遠にこの世に止まるのだ!」
 空からリューが降りて来た。彼女は天女の服を着ていた。
「リュー・・・・・・」
 カラフは彼女の姿を見て思わず呟いた。
 彼女はカラフの前に来ると跪いて微笑んだ。そしてカラフとトゥーランドットの頭上に花びらを撒いた。
 それは桃の花であった。天界に永遠に咲くと言われる桃源郷より生まれた桃の花であった。
「祝福してくれるのか、私達を・・・・・・」
 彼女は一言も答えない。だが二人の姿を見て微笑むだけであった。
 そして天界へ去って行った。後には桃の香りが残っていた。
 その香りはその場を包んだ。花が天から舞い降りて来る。それはまるで二人の幸福を彼女が祝福するようであった。



トゥーランドット   完


                  2004・4・8

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