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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十七話 庭園は最後の刹那まで(下)
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な視線で観察している。
「直衛」
 篤胤が義理の息子へと此方に問いかけてる。
「僕にとっても意外なことではあります」
 ――戦場で傷ついた天龍が好んで鉄火に身を晒す、か。僕には理解できないな。
と新城が内心呟くのと同時に
『ご迷惑かな?』
と坂東が導波を新城へと向けた。
「いえ、坂東殿の御申し出、全くの名誉といたします」
『ありがとう――それでは後は駒城閣下のお許しをいただければ良いわけですね』
「いえ、直衛は既に近衛の者です。先ずは直衛の直属上官たる実仁殿下にお聞きになるがよろしかろう」と篤胤が応える。
『それならば問題ありません。龍族利益代表が殿下から先程お許しを頂いております。あれは私の兄なのです』と坂東が云うと笑みを浮かべた篤胤が
「ならこの翁に何が言えましょう?我が末子が天龍殿の友誼を得られた事を喜ぶのみです」
と答えた事を皮切りに場の空気が緩んだ。
 故事になぞらえたのか天龍殿は一斗樽を四つも抱えて持ち込んでおり、それを皆に気前良くふるまった。下戸である面々が庭の隅で苦笑しながら眺めている内に酒飲みたちは度を過ごし、そして酒を嗜まない者達も誰もがその空気に酔っていた。――誰も彼も、最後の刹那まで平穏を貪る様に騒いでいた

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