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気合と根性で生きる者
第五話 同盟
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出展している、展示会場なのだから。

「へぇ・・・・・・ウィル・オ・ウィスプ≠フ作品・・・・・・ね。美しさで言えば、展示会場内でダントツのトップじゃないのか?」

 今、彼が見ているのは巧緻な細工を施された銀の燭台だ。その細工は燃え上がる炎の印。恐らく、旗印をモチーフにしたのだろう。やはり旗印があるとないとでは、作品の出来やコミュニティの宣伝といった部分で、大きく評価が違ってくる。この旗印をモチーフにされた細工があるからこそ、このコミュニティ独自の味がある作品として仕上がっている。

「でも、やっぱり迫力でいうと――」

 そこで一度言葉を区切り、勝は大空洞の中心部を見る。

「――この、ラッテンフェンガー製作のディーンだよねぇ」

 勝の視線の先には、目測でも身の丈三十尺以上はあろう紅い鉄の巨人という、何とも迫力のある作品が展示されていた。

「お、いたいた。マーシャルさん!」

 と、エクリプス≠ニしての名前で呼ばれ、こう呼ぶのは一人しか居ないと断定して声のした方向に振り向いた。

「――誰?」

 振り向いてそこに居たのは、くすんだ金髪をライオンの鬣の様に逆立たせている、活発そうな自分より二つ、三つくらい上の少年だった。

「――っと、この姿で会うのは初めてだったな。それじゃ、改めて自己紹介を。私はエクリプス&气梶[ダーを務めさせていただいているピエール=ジョゼフと申します。以後、お見知りおきを」

 優雅に一礼。その言葉を聞いて、一瞬、自分の耳と目を疑った。

 何故なら、あのピエール・・・・・・元ガルドだが、まずあのような長身巨躯のピチピチタキシードの男ではないのだ。

 彼はどこから見ても普通の、何処にでもいる金髪のツンツンヘアーをした少年だった。あのガルドの面影が残っている部分を言えば、くすんだ金髪しか見当たらない。

「ピエールって・・・・・・本当か?」

「そりゃもちろん」

 即答。多分、本当にあのピエールなのだろう。

「よし。なら早く同盟の話を締結させよう。行こう、ピエール」

「あ、その前に――」

 そう言って、ピエールは何かを探る様にポケットに手を突っ込み、そして目的の物があったのか手を出して、その掌に乗った指輪を、勝に渡してくる。

「眼鏡を外して、その指輪を付けてくれ。それで絶対に、ノーネーム≠フ連中には気付かれない」

 言われた通り、眼鏡を外してポケットに入れ、そしてその指輪を自分の薬指に付けるのだが――

「――特に変化を感じないけど?」

「後で鏡を見れば分かる。それよりも早く行こう。時間も時間だからな」

 言い終わってすぐ、ピエールは先頭を歩き始め、勝は疑問を残したままそれについていくのだった。



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