第一幕その一
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り胡服を着ている。
「陛下、やはりご気分が優れませぬか」
少女はその老人を気遣って声をかけた。
「いや、そうではない。ただ今日はどうも目の調子が悪くてな」
彼は弱々しく笑って答えた。
「あまり遠くのものが見えんのだ。耳は聞こえるからよいのだが」
「そうでございますか」
少女は少しホッとしたようである。
「それにしてもここでお会い出来ると思ったのですが」
少女は哀しそうな声で呟いた。
「カラフのことか」
老人はそれを聞いて言った。
「はい。折角この街におられると聞いて文を送りお約束までしたというのに」
彼女はさらに哀しそうな声を漏らした。
「リューよ、そう悲観するものではない」
老人は少女の名を呼んで慰めた。
「あ奴は約束を破るような男ではない。必ずここにやって来る」
「はい・・・・・・」
リューは頷いた。その言葉に少し元気付けられたようである。
「あ奴はこのわしの息子じゃ。だからこそよくわかるのじゃ」
「そうでしたね」
リューはそれを聞きようやく微笑んだ。
「このティムールのな。といってもわしは自分の国さえ守れなかった愚かな男じゃがな」
彼は自嘲を込めて言った。
「いえ、それは違います」
リューはティムールを慰めるようにして言った。
「陛下がお国を守れなかったのは陛下のせいではありませんわ。全ては天の時です」
「そうなのかの、実の弟の邪な企みに気付かず国を追われたのはわしが愚かであったからじゃが」
彼は苦渋に満ちた声で言った。
「お気になされないよう。あの男もいずれ天の裁きを受けます故」
「うむ・・・・・・」
彼は表情を暗くした。どうやら彼は実の弟の反乱により国を追われたらしい。
「父上」
そこで声がした。二人はその声を聞いて思わず顔を上げた。
「あ・・・・・・」
そこには青い胡服を着た若い男が立っていた。
背は高く体格は堂々としている。彫りの深い顔は引き締まり威厳と知性をかもし出している。黒い髪は後ろで下に束ねられている。黒い目には強い光が宿っている。
「殿下・・・・・・」
リューは彼の姿を見て思わず声を漏らした。
「カラフ、無事であったか」
ティムールも彼の姿を認めて思わず声を漏らした。
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