『転生。 或いは、交差する赤と紅』
Prologue
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ちゃん。
「……イッセー君」
「なんだい、夕麻ちゃん?」
「今日の記念。 初デートの記念ってことで、一つ、私のお願いを聞いてくれないかな?」
お願い。 初デート。 記念。 これは。 いいや。 これは。 まさか。
アレ……だろうか? いいや、決まっている。 そうだ、違いないだろう。
先走る妄想に、興奮に胸が高鳴る。 落ち着け。 落ち着くんだ、俺。
こんなこともあろうかと、昨晩と今朝の歯磨きは過剰と思えるほど念入りにしてきた。
心の準備。 よし。 口臭は……たぶん、きっと大丈夫だろう。
「な、何かな、夕麻ちゃん」
高鳴る鼓動。 上ずる声。 隠し切れない動揺。 違う、そうじゃないだろう。
ああ。 ああ、最悪だ。 もしものときはかっこよく決めてやろうと思っていたのに。
しかし、俺のそんな不安を余所に君はただ微笑みながら。
「死んでくれないかな?」
はっきりと、俺に向かってそう言った。
……。
……。
……。
え? え? 何を? 君は今、なんて言ったんだ?
はっきりと聞こえたはずの言葉は、しかし、俺の耳が拒絶した。
そうだ、今のは何かの聞き間違いだ。
或いは、ちょっとした冗談か何かだろう。
「ごめん、夕麻ちゃん。 聞こえなかった。 もう一度言ってくれないかな?」
そう思ったから、俺は君に聞き返す。
けれど。
けれども。
「死んで、くれないかな?」
囁くように。 甘く。 甘く。
俺の間近へと歩み寄ってきた彼女の声が、耳元で反響した。
意味不明。 理解不能。 この場にはそぐわない、あまりに不可解なその発言に。
―――冗談キツイな、夕麻ちゃん。
―――俺、もしかして、何か怒らせるようなことしたかな?
そう言おうとした、次の瞬間だった。
バサリと。 黒い翼が、視界を遮るように目の前で広がった。
生えている。 彼女の背中から、黒い翼が。
バサバサと音をたてて羽ばたくソレは、まるで天使の翼のようで。
なんだアレは? 天使? まさか、そんな筈は。
確かに夕麻ちゃんは、天使のように可愛いと思うけれど。
けれども、それはないだろう。
夕闇を背景に羽ばたく美しい彼女。 幻想的と言わざるを得ない光景。
しかし、何故だろう。 俺は、その光景を見て何故だか恐ろしいという思いを抱いた。
「ねえ、イッセー君」
彼女の双眸が俺を捉える。
その目は今までの可愛らしいものから、凍て付くような鋭いものへと変じていた。
ぞくりと、背筋に悪寒が走る。 怖い。 恐ろしい。
「あなたと過ごした僅かな日々。 ああ、本当に楽しかったわ。
初々しくて、まるで子供のままごとに付き合え
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